『フィルムメーカーズ』復刊記念トークショー 南波克行&樋口尚文が語る スピルバーグの「これまでとこれから」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年3月22日 / 新聞掲載日:2019年3月22日(第3282号)

『フィルムメーカーズ』復刊記念トークショー
南波克行&樋口尚文が語る スピルバーグの「これまでとこれから」

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南波克行氏㊧と樋口尚文氏
3月9日、紀伊國屋書店新宿本店で「伝説の映画本、『フィルムメーカーズ』復刊記念トークショー「南波克行&樋口尚文が語るスピルバーグの「これまでとこれから」」が開催された。

『フィルムメーカーズ』シリーズは映画作家一人を一冊まるごと使って紹介する内容で、1997年から2001年までキネマ旬報社から17巻まで刊行されていたが、このほど京都の出版社、宮帯出版社から復刊。当時の装いをそのままに、続編の『フィルムメーカーズ⑱ スティーヴン・スピルバーグ』(南波克行責任編集)が2月に刊行された。A5判・183頁・1800円。

本イベントでは映画批評家の南波克行氏と映画批評家、映画監督の樋口尚文氏が約1時間映画監督スティーヴン・スピルバーグについて語り合った。

南波氏は今回のイベントに樋口氏を招いた理由について、「『フィルムメーカーズ⑱』の中で私と宇田川幸洋さんとモルモット吉田さんの3人で三世代に渡るスピルバーグ体験の鼎談を収録していますが、私と同世代の方の話が欠けてしまいました。だから今回のイベントで私と同世代の樋口さんがスピルバーグ作品をどのように観てきたのかお話いただきたいと思います。もちろん樋口さんには本書の中に論考を寄稿してもらっています」と述べた。
『フィルムメーカーズ⑱スティーヴン・スピルバーグ』
樋口氏のスピルバーグ体験は72年に日本でテレビ放映された『刑事コロンボ 構想の死角』から『激突!』、『続・激突!/カージャック』、『JAWS』まではすべてリアルタイムで観たという。そんな樋口氏は作り手としてのスピルバーグを「僕は『激突!』から『1941』までがスピルバーグの作家としての構えが一定していると思っています。映画作家の作品の作り方って、工房(ギルド)方式か工場方式かの二通りがあって、工場方式は作品作り自体が一つのプロジェクトであり、組織を円滑に回す才能が求められる。例えばクリント・イーストウッドは工場タイプでしょうね。工房方式は自主映画を撮っている監督のようなこだわり、カット、ショット、照明など厳密に指定して撮るタイプで、『1941』までのスピルバーグがこれにあたります。ただ『1941』の失敗で、次の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から工場タイプに変遷するのですが、僕はギルド時代のスピルバーグの方が好きですね」と語り、さらに映画監督の野村芳太郎が『JAWS』を観た感想を脚本家の橋本忍に「この監督は不幸だね。この映画は全部OKカットで出来ているから」と逆説的な最大級の褒め言葉を述べたエピソードも披露した。

続いて話は「キネマ旬報ベスト10」においてスピルバーグ作品があまり高評価を得ない点に移り、南波氏は「最新のベスト10の中に『ペンタゴン・ペーパーズ』が入りましたけれども、他には『戦火の馬』、『プライベート・ライアン』、『シンドラーのリスト』、『カラーパープル』、『未知との遭遇』、『JAWS』、『激突!』、『E.T.』で1位になったのは『E.T.』だけです。どう考えても名作の『リンカーン』、あるいは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ですら入っていないんですね。このような評価のされ方は黒澤明に近いものを感じます」と指摘する。樋口氏は「映画監督って、年別のベスト10に入りやすい人とオールタイムのベスト10に入りやすい人がいると言われていますね。例えば内田吐夢の『飢餓海峡』は素晴らしい映画ですが、上映当時のランキングは低かった。でも今では軒並み高い評価を得ている。そういう作品もありますからね」と応答する。それに対し南波氏は「スピルバーグの作品は同時代の評価がどうしても後回しにされがちですよね。それは、高値安定で映画を撮れる人だから、むしろ心を鷲掴みにするような偏愛の対象になりくい作家と言えるのではないでしょうか」と述べた。二人のトークはイベント前日に亡くなった元ユニバーサル会長でスピルバーグの才能を見出したシド・シャインバーグについての言及や、樋口氏が本書に寄稿した『ジュラシック・パーク』『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』について論じた内容についての解説など多岐にわたり、両氏のスピルバーグ談義は大いに盛り上がった。
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