連載 ベルイマンの映画 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く99|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年3月26日 / 新聞掲載日:2019年3月22日(第3282号)

連載 ベルイマンの映画 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く99

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1960年頃のドゥーシェ
HK 
 ベルイマン映画の原動力は、音にあります。『沈黙』の電車やホテルの部屋を覚えていますでしょうか。作品全体が閉じられた空間の中で推移するのに、音の演出によって、ものすごい広がりを持った映画が立ち現れてきます。
JD 
 挙げられた例の通りです。いずれの例をとっても、40年代とは、音響が映画の中に居場所を見出そうとした時代だったのです。興味深いことに、偉大な映画作家たちは、その時代を出発点として、映画の新たな局面へと入ることになるのです。ルノワール、ルビッチ、ドライヤーのような偉大な映画作家たちが、サイレントの時代から変わらず、映画の本質に触れ続けていた一方で、多くの映画作家は音というものを漠然と理解することしかできませんでした。いずれにせよ、その後の映画の時代を、言葉がより重要性を増していく時代を考えた際に、重要な役割を果たすことになる映画作家たちが姿を現したのが40年代の初めです。マンキーウィッツ、キューカーのような映画作家たちのことです。キューカーは、その時代の前から映画を作り始めていたので正確には同じ世代ではありません。しかし、ミネリやその周囲の作家たちが40年代に姿を見せ、その後の映画の世界を大きく変えてしまうのです。キューブリックも、その作家たちに含めてもいいかもしれません。
HK 
 少し前の時代ですが、マムーリアンも考慮してもいいのではないでしょうか。トーキーの開拓者の一人であり続けていたと思います。
JD 
 マムーリアンも、重要な音の映画作家です。そのような映画作家たちが、あっという間に、「実は言葉こそが映画であるが、その言葉は映画の中に組み込まれなければならない」という事実を見せつけることになったのです。言葉とは一つのモノであり、聴覚的でもある視覚の一要素なのです。耳によって知覚しながらも、見るものでもあるのです。
HK 
 ベルイマンに関して、彼の映画の中でも特に際立っているのは、対話であると思います。
JD 
 当然のことです。
HK 
 ベルイマンの作るディアローグは、本当に知的な会話です。ほとんどファンタジーのようなものだと言えるかもしれません。聞いていても飽きることがありません
JD 
 本当に知的な会話ばかりです。しかし、その会話が視覚的でもあるのです。
HK 
 『ある結婚の風景』や『サラバンド』は、家族間の会話と単純なモンタージュだけで成り立っていますが、時間を忘れて見入ってしまいます。
JD 
 他の作品も同じように、素晴らしいものばかりです。『カイエ』は、そうした点からベルイマンに接近することになったのです。ベルイマンは、それまでの映画における言葉を、もしくはその反対に演出であるなどと信じていた人から、距離をとり新たな映画を提示して見せたのです。言葉と演出の二つは、映画の中で、共に歩みを進めることができたのです。ルノワールも同じことを行なっています。例えば『ゲームの規則』は、そのような根底の上に成り立っています。
HK 
 ベルイマン以降、非常に知的な言葉を作り出し、対話させることが、余儀なくされたのではないですか。急に、映画の中の会話の水準が引き上げられたような印象があります。
JD 
 もしくは、言葉をこの上なく重要視する映画作家も出てきました。そのような映画作家たちに、私はそれほど興味を抱いてきたわけではありません。日本を例にすると、言葉が重要な役割を果たしていた、映画作家が三人いました。日本の映画監督全てに通じているわけではないのですが、四人としてもいいかもしれません。溝口、小津、成瀬、そして黒澤の四人です。その中でも、溝口、小津、成瀬の三人の映画作家は、本当によく音を映画の中に入れ込みました。もし小津の映画を聞くのであれば、すべての音が、見るものの一部となっていることは明白です。私たちは、音を見るのです。〈次号へ〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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