【横尾 忠則】内田裕也さんの赤い靴下、運命に逆らわないイチローの生き方|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月2日 / 新聞掲載日:2019年3月29日(第3283号)

内田裕也さんの赤い靴下、運命に逆らわないイチローの生き方

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2019.3.18
 〈神社ノ境内ノ樹齢ナン年トカ云ウ大キイ木ニ、何処ノ誰ダカ分ラヌ知人(?)ガ何ヤラ、モゾモゾ願ヲ掛ケテイル。「頼ミ事ガアルナラ、スデニ願イガ叶ツタツモリデ、過去完了形デ『有リ難度ウ御座居マス』ト先ニ御礼ヲ言ツチャツタ方ガイイヨ」〉と御節介をする夢を見る。

内田裕也さんが樹木希林さんの後を追うように逝った。仲のいい夫婦は間を置かないで後を追うと云う。この2人のネジレとズレの修復は、あちらで決着をつければいい。ある時、裕也さんが履いている靴下がぼくと同じメーカーの赤い靴下だったので、「交換してくれますか」と言うので交換して履いたら底がちびていてガーゼのように薄くなっていた。彼は未だに赤い靴下を履いている。彼のスジの通し方はコンセプチュアルだ。ところが希林さんは直感的、感覚的でその行為は一種の「クセ」だった気がする。

神戸から次々回展の打合せに山本さん、平林さん来訪。山本さんが上海土産の茉莉花茶(ジャスミンティー)、マリハナ茶なんて書くけれど天山茶城の銘茶らしい。もうひとつ、白桃酒は水郷の村「朱家角」の健康によいという農家の自家製のお酒で、酒の飲めないぼくへのお土産だけれども口当り良し、甘味もあり、これならイケそう。
『知日』(中信出版社)の表紙より
2019.3.19
 〈東宝ノニユーフエイスニ応募スル少年ノ両親ニ頼マレテ、合格祈願ノタメノ少年ノ肖像画ヲ描ク〉夢を見る。

東大病院の稲葉俊郎先生から手紙を頂いて会うことになる。科学的証明の可能な現実こそ真実だと言う知性に対して、その背後に彼らが否定するもうひとつの現実の現象や存在について、東大の先生と共感ができたことは愉快なり。

中国で長期に亘って編集していたハードカバーの豪華雑誌「知日」がやっと発刊した、と送ってくる。「一本全解」(全一冊の意味か?)156ページの個人特集。中国の桁外れの破天荒な熱気がどの頁からも沸騰してくる。中国の何でも食っちゃおう精神のエネルギーには日本は負けています。

元ニューズウィークの東京支局長バーナード・クリッシャーさんの死去を知る。カンボジア初の英語新聞の発刊や内戦後のカンボジア復興に尽力された。そんなポスターなど描いて個人的に親しくしていた。冥福を祈る。
2019.3.20
 玉置浩二さんの第三弾のポスターを作ることになる。今回は写真を止めて、肖像画を描いてみよう。彼の白髪は自毛。年を取っても年を取ったと思われないのは商品価値大なり。

今日、突然オノ・ヨーコさんは何の前ぶれもなく京都からロスに発った。彼女の衝動的行動はハリケーンのようで、思わず「Youは何しに日本へ?」と聞きたい。
2019.3.21
 今日は、春分の日で休日とは知らなかった。明日のスケジュールで行動するつもりだった。だから今日の一日は儲けもんで「無い」に等しい。

イチローの深夜の引退記者会見。このタイミングを選んだのは如何にもイチローらしい。運命に逆らわないイチローの生き方には共感できるものがある。運命はすでに宿命の中にプログラミングされたものであることを彼はすでに自覚しているので、成るように成ることにさほど抵抗はなかったように思う。ファンは彼の過去に生きたいんだけれど、彼には彼の過去にはそれほど執着はないはずだ。自分の未来への期待の方が大きいんじゃないかなあ。
2019.3.22
 「ザ・ファッションポスト」(WEBサイト)で『カルティエ そこに集いし者』の書評インタビュー。

ベルギーの雑誌「BILL」が72→80年に撮った倉橋正君の「ショットダイアリィ」全128頁を紹介。2年かけて『芸術生活』誌で日本縦断旅行「原景旅行」の記録写真集。この旅行に同行した編集者2名は若くして他界している。
2019.3.23
 朝の雪の気配は消えてしまった。

アトリエで朝日新聞の来週掲載予定の書評を全面的に改稿。一端終ったものをチャラにしてしまうのは結構マゾ的快感あり。5月の個展の作品がやっと1点できたばかり。このあと大作3~5点予定だが、2点できればヨシとしよう。間に合わなきゃ過去の作品を並べれば良し。与えられた時間内でできる点数が全て、それ以上求めるのは自己犠牲になるだけ。世間に忠実だった時期は終って、自己に忠実な生き方しかできないのが今の年齢だ。このことで文句を言う神はいないだろう。結果が見えない現状は地獄ではないが、限りなく煉獄に近い。まあ宙ぶらりんの状態ってとこかな。
2019.3.24
 いよいよ大作(といっても150号)に取りかかる。できれば描いたことのない絵にしたい。指先に脳を移動させれば、頭の脳はこの間、休息していればいい。指に移植した脳は霊力となってキャンバスの上を何も考えないで駆け巡ってくれるだけでいい。
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