アナムネシスの光芒へ 幻景綺論 / 相馬 俊樹(芸術新聞社)神話的・神秘的混沌夢の断片群を刺激する芸術作品へのアプローチ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年12月16日 / 新聞掲載日:2016年12月16日(第3169号)

神話的・神秘的混沌夢の断片群を刺激する芸術作品へのアプローチ

アナムネシスの光芒へ 幻景綺論
出版社:芸術新聞社
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このたび拙書タイトルにて中心に添えたギリシア語「アナムネシス」はご存知のようにイデアの想起を意味するプラトン派の哲学用語であるが、無論それを踏まえた上で、当時の私が「想起」したのは世界的宗教学者にして幻想小説の名手でもあったミルチャ・エリアーデの最後の小説『19本の薔薇』であった。そこでは、アナムネシスは深き魂の眠りとしての忘却(アムネシス)から精神を覚醒させ、世界(宇宙)の在り方に関わる主人公自らの真の本質的記憶回復を果たすといったほどの意味で、物語のキー・コンセプトとなっていた。

これに触発されて、個としてのというより、われわれの精神の深奥に堆積する類としての人間の記憶、すなわち古き歴史の幼年期に胚胎され育まれたであろう神話的・神秘的混沌夢の断片群を刺激してくれる(あるいは私がそう感じた)幅広い領域の芸術作品にアプローチを試みてみようと思い立ち、「アナムネシス」が頭の片隅をかすめたのだと思う。

一方、実際には本書の元となったウェブ連載の方針から現代の日本の画家・写真家たちという括りで構成されることとなったわけであるが、その選択をおこなう際に、あるいは小文を認めるに際して、私の趣味嗜好だけでなく、ここ数年の知的マイ・ムード(読書傾向)が大きくかかわったのは否めないだろう。今思うと、それは三つの頂点からなる三角形を形作り、どうやら私はその内側の強力な磁場にすっかり捕われていたようなのだ。

一つ目の点は、エリアーデ、その弟子のヨハン・P・クリアーノ、ドッズ、その他、現在の流行からは程遠いと判断されてか、近辺の古書店で格安で放出されているのに気づいた、かつての古代哲学研究者・神話学者・宗教学者の名著群の、かなり無計画な乱読である。二つ目の点は、ボルヘス、カルヴィーノ、ド・クインシー、マルセル・シュオブ、アーサー・マッケンなど、若き時代に偏読した幻想系海外文学の、新たな発見・愉悦に満ちた再読である。そして、最後の点は、やはり四半世紀も前に愛読したヴォーリンガー、E・ドールス、瀧口修造などの芸術論の再読であった。

要するに、知的至福に浸り切る数多の再読の流れに身を任せながら秀逸の絵画・写真群を見、駄文を書き連ねてきたのだが、そこにまたもう一つの「アナムネシス」があったと気づいたのは実に本書刊行後のことであった。
この記事の中でご紹介した本
アナムネシスの光芒へ 幻景綺論/芸術新聞社
アナムネシスの光芒へ 幻景綺論
著 者:相馬 俊樹
出版社:芸術新聞社
以下のオンライン書店でご購入できます
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