『声が世界を抱きしめます 谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る』谷川俊太郎著、中地雅之編著|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月9日 / 新聞掲載日:2019年4月5日(第3284号)

『声が世界を抱きしめます 谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る』谷川俊太郎著、中地雅之編著

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〈みんなで歌っています/見えない声のオーロラが/幻のように心に広がり/声が世界を抱きしめます〉〈合唱の声は人間を超えて/宇宙の始まりに近づきます〉(「合唱」書き下ろし)

独特な本である。二〇一七年末に東京学芸大学で開催された合唱講座の記録と、二〇一八年春に行われた谷川氏へのインタビュー、書き下ろしの詩一篇、講座で朗読や演奏された十編、編著者選による既発表の十三篇の、計二十四篇の詩も味わうことができる。谷川氏の詩を存分に忠実に、受け取ろうとした結果、新たな何かが生まれている、そんな本だ。

谷川氏にとって音楽は「なくては生きていけない」ものであり、詩の源泉は「音楽と自然だ」。その詩の音楽性は、JASRAC登録楽曲数(二八五七)からも如実で、武満徹(五四四)、三善晃(一四九〇)、まど・みちお(一二九〇)らと比べても、はるかに凌駕する。

講座で、合唱の間に間に語られた言葉には、「読んでもらえると、読んでくれた人の心の中で詩が立ち上がるんですけれども、それが、歌になったり音楽になったりすると、その活字から立ち上がるんですね、何かが」。「ことばっていうのは、詩もそうなんですけど、意味で人に訴えるわけですよね。音楽っていうのは基本的に意味ではないもので人に訴えるわけです」「合唱によってはそういう一種の矛盾みたいなものが聴いていて面白い」。

学生指揮者からの質問「子どもに一番「これは読んでほしい」というご自身の作品」は?には、「おならうた」と、身体の底から詩を楽しむことを伝える。

そして「生きる」という曲に纏わり「死」について、生の反対が死ではなく、「生の先っちょに死があって」「同じ地平で連続してる」、「生」は意味だが、「「死」は意味じゃなくて「存在」」だと死生観も語られている。

詩は意味と同時に「存在」を書こうとする。意味を逸脱していかないと、存在の手触りには迫れない。そして音楽は人間がつくった意味に囚われずに存在に迫る――谷川氏が響かせる、音楽、合唱、詩へのことば。(A5変・二三二頁・一八〇〇円・東京学芸大学出版会)
この記事の中でご紹介した本
声が世界を抱きしめます  −谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る/東京学芸大学出版会
声が世界を抱きしめます  −谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る
著 者:谷川 俊太郎
出版社:東京学芸大学出版会
以下のオンライン書店でご購入できます
「声が世界を抱きしめます  −谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る」出版社のホームページはこちら
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