超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか 書評|松尾 豊(NHK出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月13日 / 新聞掲載日:2019年4月12日(第3285号)

シンギュラリティがいつかはやって来るかもしれない!
それでも続く部族ごっこ

超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか
著 者:松尾 豊、NHK「人間ってナンだ?超AI入門」制作班
出版社:NHK出版
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「シンギュラリティ」(技術的特異点)は、人工知能(AI)の知性が人間の知性を凌駕する時点のことをいう。

日本の学者の間では、シンギュラリティは論じるに値しない「トンデモ」な話として頭ごなしに否定されることが多かった。それに対し評者は、シンギュラリティは到来するかどうか定かでなく、真面目に議論されるべき重要なテーマだと考えている。

その点AI研究の第一人者で東京大学特任准教授の松尾豊氏も同様の意見のようだ。松尾氏は『超AI入門』で以下のように述べている。

ですから、「2045年にシンギュラリティが起こりますか」と聞かれたら、「わからない」と答えるのが、科学者としては誠実な態度だと言えます。それが起こるのは、何十年先か、何百年先かはわかりません。

とはいえ、ディープラーニングの技術の進展のスピードは私が考えるよりもはるかに速く、これらの話を単なる夢物語とさせない強さを持っているように思えるのです。


いつかは分からないが、シンギュラリティが到来してもおかしくはないというのである。「ディープラーニング」は、2010年代に普及し今のAIブームの火付け役になった技術だ。あるいは、火に油を注いでいるような技術である。

ディープラーニングによって、AIにも人間並みの画像認識が可能となった。猫の画像を分析して猫であると識別できるようになったのである。こうした画像認識の技術がもたらすインパクトを松尾氏は重要視する。

温度センサや加速度センサから得られるデータを分析することによって、機械は暑さを認識したり、人が走っていると認識したりできる。ただし、そのためにはそれぞれに対応するセンサとソフトウェアが必要だ。

ところが、精度の高い画像認識が可能となった今、一つのイメージセンサとソフトウェアでもって、汗をぬぐっている人の姿を識別して暑さを判断したり、走っている人の姿を識別して走っていると判断したりできる。

したがって、ディープラーニングの出現は、汎用性の高いAIの開発を可能にしたと言えるだろう。だからといって、シンギュラリティへと至る道のりが明瞭に見通せるようになったわけではないが、その道のりの存在は否定し難くなったのである。

『超AI入門』は、NHK・Eテレの番組「人間ってナンだ? 超AI入門 シーズン1」で、松尾氏が話したことを書き起こした著作である。

入門書らしく、AIはどのようなものか、ディープラーニングで何が可能になったかといったことを分かりやすく丁寧に説明している。だが、それだけでなく未来の社会を思い描いた知的なエンターテインメントでもある。松尾氏は、AI研究者としてだけでなく、鋭い眼差しで社会を見つめる思想家としても語っている。

例えば、AIが高度に発達し直接的な生産活動のほとんどを担えるようになっても、人間は他の人と徒党を組んで争い合う習性があるので、会社などの組織を作って売り上げを競い合うような営み、つまり労働をやめることはないと言う。松尾氏は、私が聞きに行った講演でそのような人間の根源的な営みを「部族ごっこ」と呼んでいた。

たとえ、シンギュラリティが到来しても、人間は部族ごっこを続けるかもしれない。あるいは、そうではないかもしれないが、いずれにしても本書がイマジネーションや思考を喚起する楽しい著作であることには変わりがない。
この記事の中でご紹介した本
超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか/NHK出版
超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか
著 者:松尾 豊、NHK「人間ってナンだ?超AI入門」制作班
出版社:NHK出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか」出版社のホームページはこちら
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