対談=立岩真也×天田城介 病・障害から社会を描く 『不如意の身体』『病者障害者の戦後』(青土社)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月12日 / 新聞掲載日:2019年4月12日(第3285号)

対談=立岩真也×天田城介
病・障害から社会を描く
『不如意の身体』『病者障害者の戦後』(青土社)刊行を機に

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第6回
国立療養所の歴史を検証する「見取り図」

立岩 真也氏
立岩 
 今度、福祉社会学会で、天田さんを中心に「施設の戦後史」という自主企画をやるでしょう。
天田 
 先日応募しました。『病者障害者の戦後』を見据えながら、立岩さんがいうところの、身体をめぐる五つの契機において、それぞれの施設から、どのように戦後史が語れるのかという取り組みです。ハンセン病の施設がどうだったのかを知っている人たちでも、知的障害の施設がどうであったのかは知らない。その逆も然りです。そして、その関係は全く知られていない。そうした観点から施設の戦後史をきちんと検証すべきであろうと思うんです。
立岩 
 書籍の点数だけでいったら、ハンセン病関連は圧倒的に多いけれど、もともと結核の人びとの組織として生まれた日患同盟と、ハンセン病の全療協や全患協が、どういう位置づけなのか、その後に出てくる難病の組織、全難連などと、繋がっているのかいないのか、そういう関係性を書いたものはほとんどないんだよね。

いろいろ思うことはあります。労使対立がどのように収束していくかは、労の側にずっとついていては見えないところがあります。国療の歴史では、職員サイド、あるいは組合サイドが、自分たちの職場雇用を守るために、新たな病・障害者を収容することに賛成していくという流れがあった。良し悪しはまずはおいても、その事実を書いておかないといけない。医療者、経営者がおり、労働者がおり、そこに入所している病・障害者がいて、その家族がいて、各々の施設に共通しているところと、異なるところがある。

もともと結核の人たちが入居していた国療には、六〇年代に入り、筋ジスの人たちが入所していったわけですが、そこでは関係各位の利害が一致していました。経営者は入居者募集中だったし、看護介護に困った家族がいて、この子たちを何とか救おうという声があり、その話を聞いて涙する政治家がおり、労働者はこの場に勤め続けたかった。
天田 
 かつて国立ハンセン病療養所の菊池恵楓園に勤めていた職員の方に聞いた話ですが、職員は公務員ですから、入居者が減ったからといって、労働者の雇用を目的に、人を入居させなくてもよかったはずです。療養所ではない場所に配置転換する、配属先を変更する、なぜそういう話にならなかったのか。その背景には、ハンセン病の隔離政策が続けられたという状況はあったにせよ、もともと多くの人を地元で現地雇用していたために、職員もこの場所で働くことを希望した。この地域ではそこそこ割のいい仕事でもあったので、療養所が存続することを望んでいた人もいたそうです。自分たちの仕事があることを希望しながら、同時に毎日顔を合わせていく関係性の中で、居場所のない当事者たちへ強いコミットメントが起こるという、奇妙な関係が生じたりもした。
立岩 
 そうなんですよね。日患同盟で結核のための療養所が減らされていく中で、そこを放り出されては、生活のあてがないと、残りたい人もたくさんいたわけです。そこで、働く場を維持したいという人たちと連帯していくし、日頃は組合を目障りだと思っている経営者も、都合によっては利害が一致する。そういう歴史がどのようにできあがってきたかを、見ておきましょうということですね。
天田 
 療養所の歴史について知るにも、患者だけでなく、経営者、労働者、組合、家族や、場合によってはそれ以外の組織・団体にも目配りをするという、相当数のアクターにフォーカスせざるを得ないことになります。それは一つの業界・領域にいる限りにおいては難しい作業で、やはり社会学者がすべき仕事なのではないかと思います。個々の出来事のディテールは当人たちがよく知っている。でもそれを組み合わせたり、かけ合わせたりすることによって、どこに亀裂や裂け目や断絶が生じているのか、あるいは奇妙な呉越同舟や付和雷同や同床異夢などが生じているのか、「見取り図」がないと説き明かせないところがある。 
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この記事の中でご紹介した本
不如意の身体 -病障害とある社会-/青土社
不如意の身体 -病障害とある社会-
著 者:立岩 真也
出版社:青土社
以下のオンライン書店でご購入できます
病者障害者の戦後 -生政治史点描-/青土社
病者障害者の戦後 -生政治史点描-
著 者:立岩 真也
出版社:青土社
以下のオンライン書店でご購入できます
「病者障害者の戦後 -生政治史点描-」出版社のホームページはこちら
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