対談=立岩真也×天田城介 病・障害から社会を描く 『不如意の身体』『病者障害者の戦後』(青土社)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月12日 / 新聞掲載日:2019年4月12日(第3285号)

対談=立岩真也×天田城介
病・障害から社会を描く
『不如意の身体』『病者障害者の戦後』(青土社)刊行を機に

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第7回
アーカイヴィングは、大学の社会的使命

天田 城介氏
天田 
 社会学の基本として、人物にフォーカスをあてて、まだ表に出ていないことをきちんと調べていくということは、とても大切なことですが、当事者やその家族が亡くなれば、資料が散逸するのはほとんど間違いない。立岩さんが繰り返し書いていますが、いまはかろうじて、戦後の日本に起こった出来事を、調査できる最後の時期ですよね。
立岩 
 ハンセン病関係などももう危機的な時期に至っています。ハンセン病の療養所の長島愛生園も、建物があった一帯を保存するというのが、なかなか難しそうで、そのことに関心をもってもらおうと、こちらの研究所でも企画展示を今年やろうと画策している人がいます。
天田 
 いまかろうじて残っている資料や、当時を知る人びとにも、アクセスがどんどん困難になっています。そうした資料の収集をたぶん国はやらないので、大学などの組織がいかに資料を収集・集積していくか、という話になりますね。
立岩 
 昨年十二月の頭に、同僚の医療社会学の美馬達哉らが企画した、各大学や民間団体の人を集めた、アーカイヴィングに関するシンポジウムは面白かった。

例えば立教大学には、市民の社会活動に関する資料を収集・公開する共生社会研究センターがあるし、法政大学には大原社会問題研究所の中に、環境問題に関するアーカイヴをもっている。それから神戸大学には、震災に関するアーカイヴがある。どこもお金も人も余裕があるわけではないので、一校一芸を目標にやっていくんだろうと思っているんです。
天田 
 カリフォルニア大学バークレー校をはじめいくつかの大学では、様々なアーカイヴィングが進んでいます。面白いのは、基本的に様々な人たちや組織に資料を寄贈してもらう仕組みになっているのですが、事前に厳密に領域やジャンルを設定していないことです。各種のマイノリティの運動も障害者運動も高齢者運動も、さしあたり区別しないことも少なくない。受け取った後の資料の取捨選択の際に、丁寧に資料を分類していく合理的な仕組みになっている。
立岩 
 昨年、脊損連の元会長が亡くなられて、段ボール五〇箱の資料を受け取ったんです。一部屋いっぱい、さあどうしよう、ということになりましたが(笑)、ここ数年、資料を引き受けてほしいという依頼が増えています。
天田 
 そうした資料を取捨選択、整理する仕事を若い研究者が数年かけて行い、その作業の中から、自分の研究テーマや領域を見つけていく、という流れはありだと思っているんですよ。

研究は独自に物を考えることだと思われがちだけれど、実は資料をきちんと整理・収集・分別するという単純作業を通して研究が進むことがあります。玉石混淆の資料を整理・分別する中から研究を志す人それぞれがテーマを見つけ、物事を考えていく。研究者を育てる意味でも、社会学研究を底上げするためにも、そうした仕組みは合理的かつ効果的だと思うんです。
立岩 
 知るべきことが知られ、私たちがものを考えることができるようになるために、アーカイヴィングは大学の社会的使命だと思います。    (おわり)
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この記事の中でご紹介した本
不如意の身体 -病障害とある社会-/青土社
不如意の身体 -病障害とある社会-
著 者:立岩 真也
出版社:青土社
以下のオンライン書店でご購入できます
病者障害者の戦後 -生政治史点描-/青土社
病者障害者の戦後 -生政治史点描-
著 者:立岩 真也
出版社:青土社
以下のオンライン書店でご購入できます
「病者障害者の戦後 -生政治史点描-」出版社のホームページはこちら
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