【横尾 忠則】ギルガメシュ!「出来ている!」と絵が叫ぶ。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年4月16日 / 新聞掲載日:2019年4月12日(第3285号)

ギルガメシュ!「出来ている!」と絵が叫ぶ。

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国立新美術館にてイケムラレイコさんと(撮影・徳永明美)
2019.4.1
 国立新美術館のイケムラレイコ展の最終日、一族郎党引き連れて観に行く。単身スペイン→スイス→ドイツの80年代のワイルドペインティング時代、ぼくの画家転向と時を同じく彼女は孤軍奮闘、無所属で頑張りました。

展覧会鑑賞中、新元号「令和」が決定。ぼくは終戦と同時に昭和元号を西暦に切り替えた人間で、今年が「平成31年」だというのを今日初めて知りました。

中国で出たばかりの『知日』〈我が特集号〉評判がよく、発売と同時に増刷決定。恭喜(ゴンシー)!

この間から2日続けて同じ夢を見る。

〈砂漠ヲ眺メテイル時、イキナリ「ギルガメシュ」ト言ウ声ガ天ノ一角カラ響イテキタ〉。エッ、今何ゆうた? 忘れちゃ困るので枕元のメモに「ギルガメシュ」とメモする。本紙編集者の角南さんが「ギルガメシュ」とは「全てを味わい全てを知った」半神半人で、夢を重視すると教えてくれる。夢を重視する冥界神で夢判断や神託を占うらしい。だったらぼくのこの夢判断をしてもらいたい。ギルガメシュはメソポタミアの周囲を砂漠に取り囲まれたウルクの都を治める王だという。すると夢で見た砂漠はこのウルクの砂漠ということになるんじゃないかな。早速『ギルガメシュ叙事詩』と絵本を買ってくる。
2019.4.2
 先日何かの取材でイチローの引退について聞かれたので「まあイチローはここで死んだんでしょうね」と答えると編集者は目をまん丸くして「なんということを言うんですか」みたいな顔をしたが、昨夜テレビでイチローは「ぼくは死んだんですよね」とぼくの言葉の正当性を実証してくれる発言をしていた。

神戸の次回展「人食いザメと金髪美女―笑う横尾忠則展」のカタログに書いてもらった野田秀樹さんはホント笑える爆笑文を書いてくれた。

『文藝』から朝日新聞のネットに移籍した〈アトリエ会議〉の第一回を保坂和志さん、磯﨑憲一郎さんと。話題はやはり新元号「令和」から。
2019.4.3
 骨折以来できた足裏のアストラル(幽体)タンコブは保坂さんも経験。竹踏で治したそーだ。ぼくは突起物のある健康サンダルで挑戦。

内田裕也さんのロケンロール葬で本木雅弘さんがぼくの弔辞を代読してくれる。祭壇は、「ニュー・イヤーズ・ワールド・ロック・フェスティバル」の第1回公演(1973~74年)のポスターの絵柄からヒマラヤ、ピラミッド、富士山を花で造形したインスタレーションになっている。

スペインの高級ファッション「ロエベ」の「バウラズ・イビザ2019」エディションのためにコラボの依頼を受けるが、何のコラボかサッパリ判らず。海外からは、こーした意味不明の仕事の依頼が多い。

今日は疲れたのでユンケル飲んで鰻重。岸川真さん親子で豊島横尾館へ。お嬢さんの「魂が現われそうな」の言葉は深い。がちょっと待てよ、メールの誤変換で「洗」が「現」になったんでは? だったら意味が通じる。
2019.4.4
 展覧会の作品、やっとこさ3点目にかかるが、これとて結末は見えない。エンジンの故障した飛行機に乗っている気分だ。

成城は桜が多いが、花見気分はないけれど、野川堤へ行ってみる。芝生の上にテーブルを並べて野外レストランに興じる主婦連。

夜はぜんざいの夕食。好きなもの、食べたいものが躰に一番。
ギルガメシュ
2019.4.5
 油絵は乾燥が遅いので何点か並行して描くとしよう。集中できない欠点はあるが、展覧会の期限は変えられない。今回だってすでに期日を二度ずらしてもらっている。

今日は一気に80号を描き上げる勢いで取りかかった。じっくり考えるというより刹那的な描法で一日で仕上げるつもりだ。ぼくの絵に関しては完成はあるのかないのかよくわからない。キャンバスから引いて眺めると、「出来ている!」と絵が叫んでいるように思える。「筆を置け」と言うことだ。
2019.4.6
 この間から『ギルガメシュ叙事詩』に取り憑かれている。この間夢で見た「ギルガメシュ」という声の意味がわかった。カレル・ゼーマン(チェコの映画製作者)の言葉にあの夢のヒントがあるように思えた。「芸術を通して、新しい美と、そして究極においては新しい生き方を創りだすことほど芸術家にとって、努力を要する重大な、そして同時に、よろこばしい仕事は他にない」(『ギルガメシュ王ものがたり』ルドミラ・ゼーマン著、岩波書店)

今日描き上げた絵はB29とMPとY字路で行水する女と、そこにギルガメシュを登場させた。意味不明の面白い絵になった。
2019.4.7
 〈カラー写真ノダリニ出合ウ〉夢とはいえない夢。かってカダケスのダリの家で会った時のダリより少し若いダリだった。

増田屋で山田洋次さんと松竹の濵田さんに会う。久し振りに濱田さんとアルプスで話す。

夕方までアトリエで制作。ド壺にはまっても描き続ければ、突然、光が差して「出来ている!」ことを絵が告げてくれる。それを信じれば難行苦行の行程を歩むべきだ。「信じるか信じないかは、あなた次第だ」ナンチャッテ。(よこお・ただのり=美術家)
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