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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年4月16日 / 新聞掲載日:2019年4月12日(第3285号)

連載  ニュージャーマンシネマと「ドイツ」映画   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く102

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 シネクラブで『珈琲時光』を解説するドゥーシェ
HK 
 ここまでの話の中で、音と映像の関係についてお話しいただきました。確かに、非常に強い演劇の影響があったはずです。
JD 
 はい。映画が、音を得た時期には多くの演劇の影響がありました。しかし私が話をしたのは、映画の中における発話された言葉についてです。なので、音全般は別の事柄です。言葉を含んだ、映画における音は、現代以降の映画的探求の中でこの上ない重要さを得ることになりました。問題となったのは、「音をいかにして使うのか」ということです。そして、音は少しずつ、劇的な重要さを得ることになったのです。音が、劇を生み出すのです。
HK 
 ファスビンダーは、その意味で、今日の映画に最も近い位置にあるのではないでしょうか。音楽の使用法から、会話、主題までが、今日の映画の基礎にあるように見えます。
JD 
 ファスビンダーこそが、今日の映画なのです。
HK 
 今までの一連の会話の中で、ドゥーシェさんが重要視しており、現代映画の基礎となっているルノワール、ロッセリーニ、ベルイマンについて話をしてきました。ファスビンダーと共に、映画の何が変わったのでしょうか。
JD 
 ファスビンダーも、ベルイマンと同じく演劇の世界から映画へと入ってきました。それが彼の強みでした。しかし彼の最も大きな原動力は――彼のせいではないのですが――、ドイツの歴史から来ています。第二次世界大戦が終わりを迎え、ドイツが世界中から非難を浴びたのは事実です。ドイツには、本来は本当に偉大な映画の時代が存在していました。しかし、社会の変化の中で、誰もドイツ映画に携われなくなってしまった。そのような歴史を揺さぶることのできる若きグループを待たなければいけなかったのです。新たな表現形式を作ることによって、映画だけでなくとも、同じような立場にあった芸術や人々のあり方を変革させることになりました。その中心にあったのは、ナチスを中心とした戦争中にドイツ人が何をしていたのかを見せることでもありました。ドイツ人たちが、そのような歴史に自分たちの言語を通じて向き合うまでには、多くの年月が必要だったのです。そのような点からしてファスビンダーは、本当に重要な作家です。私の考える70年代と80年代は、ファスビンダーの時代です。
HK 
 ゴダールはファスビンダーのことを「戦後唯一、ドイツを考えた映画作家」と称していました。彼の言いたいことは、おそらく、西でも東でもない「ドイツ」という国のことだと思います。
JD 
 ゴダールの言い表した通りです。ドイツという国は、ヨーロッパの歴史の中でも非常に重要な地位を占めていました。多くの芸術家が、偉大な芸術を生み出していました。それにも関わらず、戦争を機に、ドイツ人たちがそのようなドイツの文化を恥じるようになったのです。
HK 
 ドイツについて言いたいことはわかるのですが、どうしてファスビンダーなのでしょうか。ドイツのヌーヴェルヴァーグには、他にも似たようなテーマを取り扱っている作家がいたはずです。
JD 
 ヌーヴェルヴァーグの時代は、彼らよりも以前の60年代です。ドイツにあったのはヌーヴェルヴァーグではありません。ただのヴァーグ(=潮流)です(笑)。ほとんど誰もいませんでした。もし何か機能するものがあり、何かを新たに生み出せていたのならば、ヌーヴェルヴァーグと呼んでもいいでしょう。しかし、そのような意味で重要性はありません。例えば、フランスにまで入り込んでくるようなドイツ映画は、全くといっていいほどありませんでした。
HK 
 そのグループの中で、どうしてファスビンダーだけ重要視されているのでしょうか。ヴェンダースのような作家を重要視するようなことはありませんよね。
JD 
 一応、それなりに褒めていたこともあります。それほど好きな作家だったわけではありません。
HK 
 ヴェンダースには、スノッブなところがあると思います。
JD 
 私もそのように感じます。 
〈次号につづく〉
(聞き手・写真提供=久保宏樹)
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