カラフル 書評|森 絵都(文藝春秋)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年4月20日 / 新聞掲載日:2019年4月19日(第3286号)

カラフル 書評
森 絵都著『カラフル』

カラフル
著 者:森 絵都
出版社:文藝春秋
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カラフル(森 絵都)文藝春秋
カラフル
森 絵都
文藝春秋
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人間は死んだらどうなるのか。死後の世界に興味を抱くのは、人としてごく自然なことである。当然の事ながら、この世の生き物全てに、始まりがあり、終わりがある。この物語では、生前の罪により、「輪廻のサイクル」から外された「ぼく」が主人公である。輪廻とは人が繰り返し転生し、動物なども含めた生類に生まれ変わることである。「ぼく」は、死後の世界で天使業界の抽選にあたり、転生再挑戦のチャンスを得たのだ。
「ぼく」には自分の前世や過去の記憶はない。前世で罪を犯した「ぼく」は、自殺を図った中学生である小林真の体に入り込み、この世での「ホームステイ」を開始する。その目的は、下界で一定期間、誰かの体を借りて過ごし、前世で犯した過ちを思い出すことなのだ。人生に絶望し、自ら命を絶った真は、孤独感と劣等感を常に感じている少年であった。「ぼく」は所詮、真という他人の体に入っているだけであり、これは自分の人生のリセットではないと割り切り、冷めた目で真の人生を見つめて毎日を過ごしていく。それでも真として人生を歩むうちに、本当の真が、実は感受性が豊かで繊細な少年だったことを知る。そして真の心情とシンクロしていくうちに、「ぼく」自身の根底に眠っていたものを少しずつ取戻し始める。家族と本心から向き合うことで、そこに大きな誤解があったことを知り、家族の本当の姿と真に対する愛情に気づいていく。そしてこの体を小林真に返してあげたいという思いに駆られ始める。

単に抽選に当たった事により、真の人生を他人事として生きていた「ぼく」が、その人生や過去について深く考えはじめるきっかけとなったのが絵である。幼い頃から絵が好きだった彼にとって所属する美術部で真っ白なキャンパスと向き合う時間こそが、心安らぐひと時であった。そこは思い悩む日々から解放され、自由に色鮮やかに自分を表現出来る唯一の場所だったのだ。一方、「ぼく」も真として絵を描くことで自然と心が落ち着き、楽しさを覚えるようになる。真は感情を出せない代わりに、絵を描くことで、自分の色を描き出していたのだろう。そして「ぼく」も「ホームステイ」の目的であった前世の記憶を取戻し、狭い視野と思い込みによって、過ちを選択してしまったことを深く後悔した。罪の内容は敢えて綴らないでおく。真とは「ぼく」にとってどんな存在だったのだろうか。真と「ぼく」の関係性は物語の終盤で描かれることになる。

人はたくさんの色を内面に秘めている。自分の中に知らない自分がいるかもしれない。そしてまた他人のほんの一面しか見ずに、利己的な先入観で相手の人格を決めつけてしまうこともある。そして自分でも気づかぬ間に誰かを傷つける。私たちは他人を、そして自分自身を他の角度から見ることで、これまでと違う思いもよらぬ色が発見できるのではないか。くすんだ暗い自分の世界も明るくカラフルな「色」に変えることができる。主人公の「ぼく」がそれに気づくことができたとき、本当の自分を手に入れることができたのだ。この一冊の本は物語を通じ、人生にとって大切なことを教えてくれる。
この記事の中でご紹介した本
カラフル/文藝春秋
カラフル
著 者:森 絵都
出版社:文藝春秋
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