『中野のお父さんは謎を解くか』 北村薫著 文藝春秋より刊行|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月30日 / 新聞掲載日:2019年5月3日(第3287号)

『中野のお父さんは謎を解くか』 北村薫著 文藝春秋より刊行

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 文学好きの人、それもちょっとマニアックに作品の生まれた背景や、作家たちの知られざる姿を知りたいと思う人にとっては食指の動く一冊が出た。舞台回しの主人公は大手出版社の文芸誌編集者。仕事柄、新旧の作品にたくさん遭遇するが、そのときたびたび「?」と首をかしげることに出会う。新人編集者の疑問をあたかも名探偵のように解き明かすのが中野の実家で暮らす父親である、という設定。父親はもと高等学校の国語教師である。こういう言い方があるかどうか〈文学ミステリー〉といった感じの、気軽に読めて薀蓄も味わうこともできる作品である。虚実織り交ぜてというとミステリー作品の特徴であろうが、この本における「虚」は文芸誌編集部内などのシーンや、実家に戻った主人公の父母との交わりなどであり、「実」は取り上げられている文学作品についての謎解きの部分である。読者にとっては編集部内でのやりとりや上下関係、作家の先生とのつながりなどを垣間見るようで、ちょっと憧れに近い感情を持つ人も多いことだろう。また、知られざる秘話、例えば尾崎紅葉にともに師事していた徳田秋声を泉鏡花が火鉢を飛び越えて殴ったという事件は、なぜ起きたのかなど、資料を駆使して解き明かしていく。読み進めば「あ、これはあの出版社だな」「あの文学賞だ」などと、推察のつく部分もありながら、文学作品についてはきちんと真実に従って書かれている。楽屋オチと言ってしまうと身も蓋もない失礼な表現になりそうだが、そうしたことの無い、楽しくてためになる文学読み物といえそうだ。本書に登場する作品を読んでみたくなるのも嬉しい。(四六判・336頁・本体1550円)(K)

文藝春秋☎03・3265・1211
この記事の中でご紹介した本
中野のお父さんは謎を解くか/文藝春秋
中野のお父さんは謎を解くか
著 者:北村 薫
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「中野のお父さんは謎を解くか」出版社のホームページはこちら
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