吉田恭大『光と私語』(2019) のぞみなら品川名古屋間ほどの時間をかけて子孫をつくる |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2019年4月30日 / 新聞掲載日:2019年5月3日(第3287号)

のぞみなら品川名古屋間ほどの時間をかけて子孫をつくる
吉田恭大『光と私語』(2019)

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二九歳の新鋭歌人のデビュー歌集から。堂園昌彦の解説のタイトル「都市そのものである歌集」からも分かる通り、東京の風景が強く反映された歌集だけに、電車がきわめて多く詠まれる。ただJRや都電が多く、新幹線はこの一首のみである。

東海道新幹線の「のぞみ」と、「望み」との掛詞(というかダジャレ)を使っている。「新幹線の『のぞみ』でいえば」と、「君が望むなら」のダブルミーニングである。のぞみの品川名古屋間の所要時間は約一時間半。「子孫をつくる」はストレートに考えるならば、セックスをするという意味になってしまうだろうか。君が望むというなら、のぞみの品川名古屋間ほど、すなわち一時間半くらいのセックスをしようか、と。長いと感じるか感じないかは人それぞれである。

ただ、「子どもをつくる」ではなく「子孫をつくる」なのは気になる点だ。単に子どもではなく子孫というと、そこから綿々と続いてゆく「未来」のメタファーという意味合いも含んでくる。のぞみが品川名古屋間を走る一時間半くらいの間にも、確かにこの世界には新生児が生まれ、新たな未来が切り開かれていく。なんだかおしゃれな歌という気がしてきた。

品川名古屋間といえば、二〇二七年にはリニアモーターカーが開業予定だ。のぞみの所要時間からは半分以上も短縮される見込み。おそらく自分たちは品川名古屋間の距離感を子孫と共有できないだろう。それもまた、現代人たちの「のぞみ」なのか。(やまだ・わたる=歌人)
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