連載  先立つモンタージュ(ジガ・ヴェルトフ)   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く104|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年4月30日 / 新聞掲載日:2019年5月3日(第3287号)

連載  先立つモンタージュ(ジガ・ヴェルトフ)   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く104

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山形国際ドキュメンタリー映画祭を訪れたドゥーシェ(左、1991年)

HK 
 七〇年代初頭、ゴダールはすでに、トリュフォーがオータン=ララの側に行ってしまったと非難しています。
JD 
 ゴダールとトリュフォーの仲違いには、多くの要因がありました。ある面から見れば非常に当たり前の帰結とも言えます。二人の偉大な芸術家がおり、同じ水準で作品を作ることができたとしても、両者の間には必然的に不平等が見えてきます。ゴダールとトリュフォーの間では、諍いと感嘆が昔からありました。それが、突如として大きな喧嘩へと傾いてしまったのです。最も大きな原因は、ゴダールの嫉妬です。フランソワが、瞬く間にあれほど有名になったのにもかかわらず、ジャン=リュックは映画好きの世界の中ですら困難を抱えたままだったのです。
HK 
 簡単には想像ができませんが、ゴダールは自分の人生を、失敗続きだったとぼやいていますね。
JD 
 彼はそのように言っていますが、ゴダールのような失敗なら問題ありません(笑)。ゴダールは唯一無二の存在であり続けています。私の観点では、ゴダールは映画を問い続けている映画作家です。答えがない問いではありません。無数に返答のある問題を立て続けているのです。
HK 
 ゴダールが、映画について何かを発明したとお考えですか。
JD 
 ゴダールは、発明をするのではなく、探し求めているのです。いかにして再び組み立てることができるのかを知るために、分解しようとしているのです。映画とは、何よりも先にモンタージュです。ひとつのイメージがあり、それに続くイメージがあり、別のイメージも続く。三つのイメージが、互いに別々のものとして存在しているのです。そのようなイメージが一体となるところに、モンタージュは存在しています。つまり、映画はモンタージュの中にこそ存在しているのです。ゴダールは、撮影後の過程としての編集作業を信じていた映画作家とは異なり、モンタージュこそが映画の基礎にあると理解した初めての映画作家だったのです。
HK 
 モンタージュが、映画の初めにあると言っていたのは、ゴダールが最初ではなかったはずです。ジガ・ヴェルトフが、一九二九年『カメラを持った男』を作った直後に「映画眼とは」というマニフェストを発表しています。その中で、モンタージュを三つの段階に定義していました。映画を構想する段階、撮影の段階、編集の段階、つまり映画に関わるもの全てがモンタージュであると考えていたようです。
JD 
 忘れてはならないのは、ゴダールは一九二〇年代三〇年代のロシア・アヴァンギャルドに、非常に強い興味を持ち続けていますが、その中でもジガ・ヴェルトフに最も重きを与え続けているということです。ヴェルトフの理論も、ゴダールが自分の言葉に置き換え利用しています。
HK 
 ソヴィエトの映画作家たちを見ていて思うのは、ヴェルトフからタルコフスキーに至るまで、どこかで人々の救世主のようになろうとする強い意思です。芸術作品を通じて、何か考え方を布教させようとしています。教育的なものではなく、どちらかというと啓蒙的なもの感じます。
JD 
 それが、ロシアの文化です。ロシアという国は、非常に広大でありながらも、同時に本当に狭いものでもあるのです。私たちの文化に奇妙に感じられますが、そのような二元性が、素晴らしい芸術を生み出してきたのです。
HK 
 ゴダールの映画が、ロシア的なあり方を持っているのは分かりやすいことですが、テレビ時代のロッセリーニにも似たような点が見えます。ロッセリーニはテレビを通じて、教育映画ではなく、映画作品でもなく、啓蒙的なモノを作ろうと考えていました。そこから、観客と作品のコミュニケーションが生まれ、人類の希望になり得ると考えていた節があります。   〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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