東畑開人×高野秀行 公開トークイベント載録 〝イルツラ〟沖縄・デイケア施設でケアとセラピーについて考えたこと 『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)刊行記念|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月26日 / 新聞掲載日:2019年5月3日(第3287号)

東畑開人×高野秀行 公開トークイベント載録
〝イルツラ〟沖縄・デイケア施設でケアとセラピーについて考えたこと
『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)刊行記念

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四月四日、今年二月に刊行された話題の新刊『居るのはつらいよ』(医学書院)の刊行を記念して、著者で臨床心理士の東畑開人氏とノンフィクション作家の高野秀行氏による公開トークイベント「ウサギ穴の向こうで書くこと――『居るのはつらいよ』(医学書院)刊行記念」を、神保町・読書人隣りで開催した。

本書は沖縄の精神科デイケア施設という〝異世界〟で働くことになった臨床心理士の東畑氏が、そのときの体験を振り返り、「ケアとセラピー」、そして「ただ、居る」ことの価値について考えぬいた、前代未聞の「スペクタクル学術書」である。

当日のトークイベントは満員御礼となり、高野氏の『謎の独立国家ソマリランド』を読んで天啓を受けたという東畑氏と、本書が激しく琴線に触れたという高野氏による絶妙なトークが会場中に笑いを巻き起こしながら繰り広げられた。その模様を紙上再現する。             (編集部)
第1回
「ただ、いる、だけ」を書いた本

東畑 開人氏
東畑 
 この本は、僕が沖縄のデイケアで働いていたときの体験を書いたものです。僕は大学院で専門的なセラピーやカウンセリングを学んで、よしこれから専門家として仕事をするんだ! と思っていたのに、いざ現場に入ってみたら、「とりあえず座っておいてくれ」と言われて麦茶作ったりトランプしたりして過ごすことになりました。仕事が「ただ、いる、だけ」だった。これはいったい何なんだろうと、よくわからないままに混乱していたことを、この本で書きました。

それで、この本を高野さんにお送りしたら、あれよあれよという間に、気が付いたら高野さんと対談させてもらえることになっていました。一説によると、高野さんの深遠な陰謀がはりめぐらされていたとか(笑)。
高野 
 陰謀じゃなくて作戦です。ただ、ツイッターでつぶやくという(笑)。もっと話したいことがあるとつぶやいておけば、きっとどこか気の利いた編集者の人が対談を設定してくれるんじゃないかと。万一それでも無視されているようだったら、知り合いの編集者にでも声をかけて強引にでも成立させようと思っていたわけですが、実にあっけなく今日の対談が成立しました。
東畑 
 企画が立ち上がったので、高野さんにお願いのメールを送ったら、メールの一行目に「ふっふっふ。思った通りになりましたね」とあって、完全にお釈迦様の手のひらにいたのだと思いました(笑)。
高野 
 それでお話を聞いていきたいのですが、僕は東畑さんの前作『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』(誠信書房)という本を読んですごく面白かったんです。沖縄はスピリチュアル・カウンセリングがすごく盛んな土地で、東畑さんがその中に入っていって臨床心理学そのものを相対化してしまう、心の治療とは何かということを上から目線ではなく書いていくというのが非常に良かったんです。実は今回の『居るのはつらいよ』(医学書院、以下『イルツラ』)は時期的には前作より前の話なんですよね。読んでいると文体とか勢いは前作の方がテンションは高くて、『イルツラ』の方はいるだけなのでテンションが低い。ですから、時期的に前作の方が後のような気がするのですが、実は前の段階の話だと。それで僕は期待満々で読んだわけです。実際すごく密度の高い本で、そうだよねってまず共感する部分がたくさんありました。もう一つは、ああそういうことなのかと新たに気づかされたことがあって、そこでちょっとよくわからないことがあった。それについてぜひ話をしてみたいなと思ったわけです。まずこの本はすごく売れてますよね。今日見てきてもアマゾンで二〇〇位台なんです。一時期は一〇〇位以内に入っていて、そんな本はほとんどない。一説には心理士は全員買っているという噂もありますが。
東畑 
 そうですね。心理士の方は本当によく買ってくれていますね。というのも前代未聞なんです、ただ座ってる話を書くというのは。実は心理士って、みんなただ座っている仕事をしているんですよ。だけど、ただ座ってるだけでは、専門的なことをやっているように見えないので、そういうことは論文になったり、本になったりしないんですね。そこに『イルツラ』が登場したわけです。座って麦茶を飲んでいる心理士たちは、自分は何をやっているんだろうと思っていたんでしょうね。僕もめちゃめちゃそう思ってましたから(笑)。
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この記事の中でご紹介した本
居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書/医学書院
居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書
著 者:東畑 開人
出版社:医学書院
以下のオンライン書店でご購入できます
「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」出版社のホームページはこちら
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