東畑開人×高野秀行 公開トークイベント載録 〝イルツラ〟沖縄・デイケア施設でケアとセラピーについて考えたこと 『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)刊行記念|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年4月26日 / 新聞掲載日:2019年5月3日(第3287号)

東畑開人×高野秀行 公開トークイベント載録
〝イルツラ〟沖縄・デイケア施設でケアとセラピーについて考えたこと
『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)刊行記念

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第2回
「居場所」を求める話

高野 秀行氏
高野 
 それから、読者としては心理学やケアに関係のない人の間でも読まれていますよね。それで思ったことですが、これは一つの文学みたいなものではないかと。例えば最近売れている本で、はるな檸檬さんの『ダルちゃん』(小学館)という漫画がある。これは派遣OLの話で、ダルちゃんという主人公が自分は地球人ではないと、ダルダル星から来たダルダル星人で、擬態を施してなんとか地球人のふりをしているんだと。人とうまくコミュニケーションが取れないとか、自分の居場所がないということを描いてるんだけど、それがすごく売れているわけです。でもそういうのは本来なら文学がやっていたことだと思うんです。ところが文学が今あまりにも専門化し過ぎて、普通の人に敷居が高すぎるようになってしまったので、そういう漫画がその役割を担っているのではないかと思ったのですが、東畑さんの『イルツラ』も居場所を求める話ですよね。居場所を求める話というのは基本的には日本の文学の伝統だし、フィクションの王道でもあります。最近の例でいうと、『この世界の片隅に』というアニメーション映画も、主人公が何もしないわけです。日本のフィクションの特徴だと思うのですが、主人公が運命を切り拓かないでただ周囲の要請で流されていく。流されていった当人にとってはまったくの異世界で何かきっかけがあって自分の居場所を見つけていくというパターンが圧倒的に多いんです。
東畑 
 確かに。村上春樹の小説もそうですね。イルツラ状態になるんだけど、ぼんやりして、何かに巻き込まれるのを待ち続ける物語ばかり書いてますね。
高野 
 これが韓国だと全然違っていて、主人公がガシガシ道をかきわけていって新しい場所で戦いながら自分の居場所を作っていく。そこが全然違う作り方だなといつも僕は思っていて、三浦しをんさんの『舟を編む』という辞書の話も、主人公がまったく興味のない辞書編纂室にという部署に行かされて、でもやっていくうちにその面白さに目覚める、そういう話なわけです。王道としてあるんだけれども、そのもっと深い傷つきやすいレベルでやると、エンタメではもう処理できなくなってきて、東畑さんの『イルツラ』がそういう受け皿の一つになっているのかなと、勝手に解釈したりするわけです。
東畑 
 この本を書くときに、『千と千尋の神隠し』をイメージしていました。あの話も異世界の湯屋に放り込まれて〝イルツラ〟なんだけど、成長して帰ってくるみたいな話ですから。
高野 
 そうですね。そこで自分が世界を変えたりはしない。そういう話はちょっと日本人には不向きみたいです。
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この記事の中でご紹介した本
居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書/医学書院
居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書
著 者:東畑 開人
出版社:医学書院
以下のオンライン書店でご購入できます
「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」出版社のホームページはこちら
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