北迫薫『夜間飛行』 新潮社より刊行|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年5月14日 / 新聞掲載日:2019年5月10日(第3288号)

北迫薫『夜間飛行』 新潮社より刊行

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夜間飛行(北迫 薫)新潮社
夜間飛行
北迫 薫
新潮社
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処女作が大手出版社から刊行できるというのはなんという僥倖なのだろう。いや、出版社がこの作家の力量を見極め期待しているということの証明だろうか。

この作品は銀座の夜がもっと華やかで、作家、大物俳優などが顔を揃え文化の香りを漂わせていた昭和の時代に、後に直木賞作家となる山口洋子が営む「姫」で、銀座ナンバー1と言われたホステス光(姫での源氏名はまこと)の生涯を、姪である著者が若くして逝った叔母の死後五〇年を経て克明に綴ったものである。登場する人物のほとんどが実名であることを考慮すると、この作品はドキュメンタリーともいえるが主人公の数奇な運命が描かれており、やはりすぐれた文芸作品として読む方がふさわしい。筆者は読みながらすぐに宮尾登美子の『鬼龍院花子の生涯』を思い浮かべた。この作品は宮尾が土佐のことばを巧みに駆使して、高知という土地の香りと時代背景を読み手の心に残した名作である。『夜間飛行』でも前半は主人公の二〇歳前後までが博多のことばでつづられる。福岡の女の持つ気風のよさはこの地方独特の話しことば抜きにしては表現しきれない。なぜ、光は銀座ナンバー1のホステスへと成りあがっていったのか。そして、なぜ作家たちに愛されたのか。前半部分の博多での生い立ちが光の人物像を照らし出す。処女作ながらその力量に宮尾登美子の再来、という言葉が頭をよぎるが、それは次回作を読むことができてからの賛辞にしたいと思う。残念なのは『夜間飛行』というタイトルである。主人公の活躍の場が銀座であったこと、また福岡からの逃避行から選ばれたのであろうと思うが、海外の有名な作品を思い出すところに、読む側としての戸惑いを覚えるのも偽らざるところである。(四六変・236頁・本体1600円)(K)

新潮社☎03・3266・5111
この記事の中でご紹介した本
夜間飛行/新潮社
夜間飛行
著 者:北迫 薫
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
「夜間飛行」出版社のホームページはこちら
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