『ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス』 公開記念イベントレポート ニューヨーク公共図書館と〈図書館の未来〉|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年5月10日 / 新聞掲載日:2019年5月10日(第3288号)

『ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス』 公開記念イベントレポート
ニューヨーク公共図書館と〈図書館の未来〉

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二〇一六年にアカデミー名誉賞を受賞した、巨匠フレデリック・ワイズマン監督の傑作ドキュメンタリー『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』が、五月十八日より、神保町・岩波ホールで公開される(ほか全国順次)。今回舞台となったのは、世界で最も有名な図書館のひとつ、ニューヨーク公共図書館(NYPL)。本作ではその舞台裏に密着し、この図書館が世界で最も有名である〈理由〉を示す。

映画の公開を前に、ニューヨーク公共図書館幹部のキャリー・ウェルチ氏と在米ジャーナリストで『未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告』(岩波書店)の著者・菅谷明子氏が来日。四月九日、千代田区・日比谷図書文化館で映画公開記念のトークとパネルディスカッションが開催された。本イベントは二部構成で行なわれ、第一部では、キャリー・ウェルチ氏と菅谷明子氏によるトークとダイジェスト映像によるコメンタリー上映。第二部で日本の図書館関係者、研究者などのパネラーを交えてのパネルディスカッションが行なわれた。その模様をレポートする。          (編集部)
第1回
■人々のための図書館

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』監督・録音・編集・製作:フレデリック・ワイズマン
原題:Ex Libris-The New York Public Library|2017|アメリカ|205分 配給:ミモザフィルムズ/ムヴィオラ 5月18日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー! 公式サイト

キャリー・ウェルチ氏
第一部は、ウェルチ氏と菅谷氏が登壇。ウェルチ氏はニューヨーク公共図書館(以下、NYPL)を次のように紹介した。

「NYPLはアメリカの中でもユニークな存在で、ヨーロッパの国立図書館ともまた違う独特の個性を持っている。今年で一二五歳になるこの図書館が設立されるきっかけを与えてくれたのはアンドリュー・カーネギー氏で、彼の父親がそもそも出身地のスコットランドで図書館を設立した経緯があり、図書館が社会にとって極めて重要であるとの信念、「Library for the people」、つまり図書館は人々のためのものでなければならないということを強く信奉していた。その時の寄贈をもとに作られた図書館が現在もNYPLの一環として機能している」。

現在のNYPLは本部を含め四つの研究図書館と八八の分館で構成されている。設立当初から非常に複雑な機構を持つ図書館だが、地域の人々のための図書館機能の充実と研究者の学術研究のための図書館という二つの両立を目指してきたことが特長である。現在、NYPLの職員は約三〇〇〇名、そのうち約二三〇〇名が分館で利用者のサポートをしていて、彼らは図書館を、「People's palace」という言い方をする。つまり図書館は市民にとっての宮殿でなければならないということである、とウェルチ氏は語った。
■世界最大級の知の殿堂の舞台裏

在米ジャーナリストの菅谷氏がNYPLと最初に出会ったのは一九九五年、NYで大学院に通っていた時だった。その後フリーランスになって情報格差と図書館の重要性に気づかされたという。

「それまで企業や大学に所属してデータベースを使っていたが、フリーランスになったとたん個人ではデータベースが使えないことがわかった。どうやって仕事をしていけばいいのか目の前が真っ暗になったが、そのときにNYPLがデータベースを無料提供していたことを思い出し、最初はデータベースを目的に図書館に通いはじめた。そこで毎日来ている人がたくさんいることに気づき、興味を持つようになった。それまでは本を借りて自分の教養を高めたり、大学でリサーチしたりするために使うようなイメージだった図書館が、アメリカではアクションをするためのものだということに気づいた」

そして九九年、菅谷氏は『中央公論』に「進化するニューヨーク公共図書館」というルポを寄稿した。記事の反響は大きく、菅谷氏はこれは日本社会にとっても大事なことだと、〇三年『未来をつくる図書館』を出版した。映画の魅力を菅谷氏は、このように評した。

「私は本を出した時、実はこれをドキュメンタリーにした方がいいと思った。ワイズマン監督は私たちを透明人間にしてNYPLに送り込み、現場に立ち会わせてくれる。そこがやはりこの映画の魅力。この映画はナレーターがいて解釈したものを見せるのではなく生の素材自体を提示してそこからそれぞれに理解させる。三時間以上あるこの映画は今の何でもお手軽にすませようとする私たちに対する挑戦状のようなもの。この映画は知とは何かを深く考えさせられる。そういう意味で素晴らしい」
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