連載 反「作家」主義  ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 105|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年5月14日 / 新聞掲載日:2019年5月10日(第3288号)

連載 反「作家」主義  ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 105

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カンヌの「クロワゼット大通り」にて(左から二人目)
JD 
 ロッセリーニは、映画に対して非常に簡素な考えを持っていました。機械にあるものを取り込み、一度ボタンを押すならば、そのあるものは回転しはじめます。フィルムが動きを生み出すのです。つまり、映画の全てとは、動きです。そしてロッセリーニは、その動きを見つけ出そうということのみを考えていました。私たちは、彼の映画の中に、動きを生み出すための、もしくは破壊するための試みを見ることになるのです。ロッセリーニの映画は、いつもそのような動きの上に作られています。その結果、登場人物たちは、どこにいくかがわからないのです。ロッセリーニが、今日に至るまで面白い映画作家であり続けているのは、彼の映画が、映画という芸術の本質に触れ続けているからなのです。私にとっての、最も偉大なイタリアの映画作家です。トーキーの初めの時期からヌーヴェルヴァーグに至るまでの間を支えていたのは、私たちにとっては、ロッセリーニでした。彼の映画こそが、その後の映画を作る上での重要な目標であったのです。
HK 
 ドゥーシェさんが映画について話す際には、映画の機能という考え方が強く出ていますが、そのような考え方をしていたのは、わずかな批評家だけだったと思います。今日の批評家や研究者を考えると、ここ数十年来の傾向だと思いますが、まず何よりも作家の名前ありきで作品を考える。つまり、この映画作家は作品を通じて何を言いたいのか、作家研究のようなものが主流になっています。しかし、ドゥーシェさんの批評は、一本の作品を見るという観点から成り立っている。つまり、映画の側から理解しようとされているのではないですか。
JD 
 当然のことです。作家とは何者でもありません。重要なのは、どうして彼が作家であるのかということです。つまり、作家の成した仕事自体が重要なのです。
HK 
 つまり、考え方や思想の展開の仕方が重要であると?
JD 
 そうです。そして、特に大事なのは機械です。映画とは、人類の歴史の中で最後に現れた芸術であることを忘れてはいけません。他の芸術は、映画と異なり、直接機械に関係することはありません。一世紀ほど前に急に姿を現した芸術は、機械による芸術であったのです。絵画、文学、演劇、音楽のような視点を持つことはなかったのです。機械が機能するからこそ、映画は動きを持つのです。よって、いかにしてその機械が動くのかを理解することが必要だったのです。偉大な映画作家たち、その中でも本当に偉大な映画作家たちは、映画の機械的面から仕事をしてきました。他の人々はただ物語を語らせるだけです。彼らは映画作家ではありません。
HK 
 そのような考え方は、もしかしたら一九五〇年代、もしくは二〇世紀初頭にあった問題だったのではないでしょうか。一九世紀とは、芸術という考え方が生まれた時期だったと思います。つまり、僕らが今日考えているような、芸術という観念のことです。そして、そのような考え方が二〇世紀初頭の批評家に大きな影響を与えていたのではないでしょうか。
JD 
 そのような考え方には同意しかねます。例えば中国の芸術を考えれば、三〇〇〇年前には既に存在していました。
HK 
 ヨーロッパであっても中国であっても、古代の芸術作品は装飾であり、オブジェであったはずです。
JD 
 オブジェであり、道理でした。そして、そのようなものが存在うるのは、宗教が主な理由でした。多くの文明で、そうしたあり方は見られはずです。
HK 
 フランスはいかがでしょうか。
JD 
 芸術について、フランスだけを取り上げるべきではありません。芸術はヨーロッパ全体に関わる問題であったからです。フランスには芸術があり、イギリスにもドイツにもイタリアにも存在していました。もし西洋文明を例にするならば、古代から、芸術作品は存在しており、芸術という考え方も存在していました。
HK 
 その点について反論はありません。しかし問題としたいのは、芸術を芸術として成り立たせることになった不思議な力、批評という機能についてです。
JD 
 なぜならば、フランスには思想の歴史が存在していたからです。
〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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