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更新日:2019年5月17日 / 新聞掲載日:2019年5月17日(第3289号)

仏像作って魂入れず

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『狼の義』は、書店POPなどで「絶対泣ける!」と紹介される類の本ではないだろう。日本近代の政界を舞台にした、ノンフィクションと同じように資料を集め取材し構築された小説作品である。でも特に後半、常に泣けてきて困った。単純な言い方だけれど、「人間」が書かれていたからかと思う。

立場や思惑は違えど、新しい日本を立ち上げるために闘い、世の中を動かそうとした人びとがいて、利己より優先されるものがあった時代。自分の生を何のために使い、どう生き切るか。そのそれぞれの生き方と死に様が不思議に符合してみえた。そして知力も体力も策略も投じて、国民の権利を入れた憲法、議会を運用し根づかせていこうと、体を張って信念を貫いてきた、それなのに、時代は暴力で片をつける世界へと戻ろうとしていく。その犬養の孤独な闘いと、それを側で護りきれない古島の姿が胸を突いた。私自身を含め、いまこんなふうに生きている人が日本にいるだろうか…。

日本の政治は未だ「仏像作って魂入れず」。犬養の、古島のバラの実を、本書を読むことで、気持だけでも受け取れるならと思う。   (S)
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