加藤陽子氏インタビュー 天皇はいかに受け継がれたか 歴史学研究会編/加藤陽子責任編集『天皇はいかに受け継がれたか 天皇の身体と皇位継承』(績文堂出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年5月24日 / 新聞掲載日:2019年5月24日(第3290号)

加藤陽子氏インタビュー
天皇はいかに受け継がれたか
歴史学研究会編/加藤陽子責任編集『天皇はいかに受け継がれたか 天皇の身体と皇位継承』(績文堂出版)

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「令和」の幕開けである。五月一日午前〇時、退位特例法に基づく代替わりにより新天皇が即位し、元号は「平成」から「令和」へ改められた。
平成最後の日となった四月三〇日は、憲政史上初の国事行為「退位礼正殿の儀」が行われ、一八一七年光格天皇以来二〇二年ぶりの退位が実現し、明けて五月一日は、「剣璽等承継の儀」「即位後朝見の儀」が行われ、第一二五代天皇から第一二六代天皇へと、皇位継承がなされた。今年二月、歴史学研究会編/加藤陽子責任編集『天皇はいかに受け継がれたか 天皇の身体と皇位継承』が績文堂出版より刊行された。
本書は、研究会の同時代的な問題意識のもと、二〇一八年四月に開催されたシンポジウムを軸に、天皇をめぐる歴史と皇位継承の変遷を、各時代各領域の第一人者二二名による論文・コラムで通史的に深くまた相対的に広くとらえるものである。
本書の刊行を機に、本書を責任編集された加藤陽子氏(東京大学教授・近現代史)にお話を伺った。 
(編集部)
第1回
天皇制研究の最前線縦軸からも横軸からも

加藤 陽子氏
――二〇一八年四月に東大の大教室で開催された、歴史学研究会研総合部会例会「天皇の身体と皇位継承 歴史から考える」は、学生も多数出席し、立ち見が出る盛況ぶりでした。シンポジウムのそもそもの主旨として、一六年七月一三日のNHKによる「生前退位」報道に端を発し、一六年八月八日の天皇(現上皇)の「おことば」、有識者会議の設置と特例法の制定、そして「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(一七年六月十六日公布)の成立という経緯を踏まえ、皇室典範に定められた「終生在位」に変更が加えられたというインパクトのもと、日本の天皇と天皇制を「身体と皇位継承」の観点からふりかえる、というものでした。本書は、そのシンポジウムをもとに編まれたものですが、各時代各領域における第一線の研究者の論文にコラムの論者も加わり、非常に豊かな内容という印象を受けました。天皇研究の最前線を追えるというだけでなく、個性的な執筆陣によるそれぞれ独立した鋭い論考が通史的に読めるという点も魅力的です。
加藤 
 この本は日本の古代、中世、近世、近代という四つの時代の論文と、中国史、ヨーロッパ史の論文計一〇本のほかコラム十二本で構成されています。このように構成が盛りだくさんになった理由は、副題の「天皇の身体と皇位継承」というキーワードに、ある意味で忠実にしたがった結果です。論文の方は、「皇位継承」に絞って全体像をおさえてもらい、コラムの方は、どちらかといえば「身体」に焦点を当て、さまざまな時代や地域の専門家に、大王、天皇、皇帝、王などの身体をめぐる論考を書いてもらったのです。

所収した論文は盛りだくさんです。古代史は荒木敏夫さんの「「譲位」の誕生」と仁藤智子さんの「幼帝の出現と皇位継承」。中世史は新田一郎さんの「譲位の制度化 中世天皇の世代サイクル構造」と池享さんの「「譲位」の中断と天皇の立場」。近世史は藤田覚さんの「近世の皇位継承」。近代史は西川誠さんの「皇室典範の制定 明治の皇位継承」、河西秀哉さんの「戦後天皇制と天皇 制度と個人のはざまでの退位」の二本に加え、拙稿「近代の三人目の天皇として 昭和天皇の場合」。中国史では金子修一さんの「中国皇帝の譲位と元号」、東欧史では中澤達哉さんの「ヨーロッパの選挙王政と世襲王政 天皇譲位に寄せて」というように、天皇の歴史を縦軸からも横軸からも相対化しうる構成としました。

――本書の「はじめに」でお書きになられていますが、例えば天皇制の「存続」という観点から読んでも、古代史の荒木論文で「在位中に殺害される王がまったく稀で、譲位する王が、これほど多く存在する歴史をもつ国は、世界でも珍しい」(一一頁)と述べれば、仁藤論文では「日本史上、多くの女性天皇と幼帝が即位している」として、八人一〇代にも及ぶ女性天皇の出現は東アジアの王権でも珍しいという点や(二九頁)、幼帝出現の受け皿は生前譲位の実現により古代社会に根づいた王権の多極構造(太上天皇・皇太子・皇后・皇太后・太皇太后等)が機能したと読み解く(三八頁)。続く中世史の新田論文では、皇位継承に関する明確な準則がなかったゆえに、時代を経るごとに継承方式の推移が見られ「擬制的な直系」の創出がめざされたという様相や構造を概観し、近世史の藤田論文では、継承の難しさを「微々如褸(びびいとのごとし)」と評した史料を紹介しながら、近世の皇統が短命の天皇が続いたゆえに不安定なものだった(一二三頁)、ということが理解できます。そして中世における公武関係を論じた池論文の、それは「ほとんど「異質化」というべきほどの深い変動をふくむ「連続」」(七六頁)だったというように、ひとつの問題関心について、各時代ごとの天皇制の特徴をつかみながら通して読むことができるわけですね。

また、それぞれ章ごとのコラムも着眼点がユニークで、理解を深めるだけでなく、そこだけを読んでも面白い独立性のあるコラム、トピックが出揃っていると思いました。
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この記事の中でご紹介した本
天皇はいかに受け継がれたか  ー天皇の身体と皇位継承/績文堂出版
天皇はいかに受け継がれたか  ー天皇の身体と皇位継承
編集者:加藤 陽子
編 集:歴史学研究会
出版社:績文堂出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「天皇はいかに受け継がれたか  ー天皇の身体と皇位継承」出版社のホームページはこちら
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