加藤陽子氏インタビュー 天皇はいかに受け継がれたか 歴史学研究会編/加藤陽子責任編集『天皇はいかに受け継がれたか 天皇の身体と皇位継承』(績文堂出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年5月24日 / 新聞掲載日:2019年5月24日(第3290号)

加藤陽子氏インタビュー
天皇はいかに受け継がれたか
歴史学研究会編/加藤陽子責任編集『天皇はいかに受け継がれたか 天皇の身体と皇位継承』(績文堂出版)

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第6回
天皇制研究の現在

――いま、時代の転換点に立って、歴史家としてどのようにお感じでしょうか。
加藤 
 新しいことを目にした瞬間、今までの論じ方が突然古くなったと感じられる場面は日常でもよくあります。その点について、天皇制研究の流れを最後に図式化してまとめておきましょう。まず、天皇制という言葉は戦前期にあってコミンテルンが指導していた日本共産党が初めて用いた語彙でした。また、大正から昭和への改元や代替わりの頃、一九二七、二八年は明治維新六〇年目であり、マルクス経済学の講座派や労農派などが明治維新に目を向ける時期にあたっていました。つまり共産党としては、来たるべき革命を考えるため、明治維新がブルジョワ革命段階だったのか、絶対主義革命段階だったのかを確定しておく必要があった。つまり、明治維新とそこで創出された天皇制への視角というのは、まずはマルクス主義者の間で生まれたわけです。続いて、戦後に社会科学が花開くなかで、支配の正当性の三類型(伝統的、カリスマ的、合法的)を論じたマックス・ヴェーバーの影響下で天皇制研究は進展します。水林彪さんの『天皇制史論』や、佐藤進一さんの『日本中世史論集』(岩波書店、一九九〇年)などが書かれ、精緻な国家論が展開されました。それらの議論をまとめますと、天皇(制)はなぜ律令制から幕末維新まで生き残ったかといえば、結局、天皇は国家の最終的な意思決定を確定される権威として支配を継続させえたからだとの見方になりますか。本質は不変だということでしょう。権力を持たない権威である天皇が、官位任免体大権を核とする権威によって幕末まで生き延びたというイメージでしょうか。

近代史分野での天皇及び天皇制への研究環境が劇的に良くなったことで、これ以降は、近現代史からの知見と分析視角が、前近代の研究にも刺激を与えうることも出てくるのではないでしょうか。天皇と法の規制との関係、天皇と皇族を加えた皇室というものは私的な集団なのか公的な集団なのか、等々。平成の天皇自身の発意による譲位という事態が、天皇制研究のパラダイムをまた一つ更新させました。

新たな議論をもう一度創ってゆくときが来ています。    (おわり)
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この記事の中でご紹介した本
天皇はいかに受け継がれたか  ー天皇の身体と皇位継承/績文堂出版
天皇はいかに受け継がれたか  ー天皇の身体と皇位継承
編集者:加藤 陽子
編 集:歴史学研究会
出版社:績文堂出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「天皇はいかに受け継がれたか  ー天皇の身体と皇位継承」出版社のホームページはこちら
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