天皇家の女たち 古代から現代まで 書評|鈴木 裕子(社会評論社 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年5月25日 / 新聞掲載日:2019年5月24日(第3290号)

天皇家の女たち 古代から現代まで 書評
天皇と天皇制を考える
時宜を得た刊行にして、主権者必読の書

天皇家の女たち 古代から現代まで
著 者:鈴木 裕子
出版社:社会評論社
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 文字通りの大著。疲労困憊して読了した日が天皇退位・即位の日だった。メディアは「陛下」を連発。四日は前夜、早朝から北海道はじめ全国、遠路はるばる押し寄せた一四万超の日の丸打ち振る参賀者は「臣民」か。「陛下」とは、はるかな高所の尊・聖域におわします天子に階陛の下から臣下が奏上、拝謁する意で憲法違反用語なのだ。憲法違反を堂々と重ねる安倍政権の呆れた四割支持と連動する現象なのだろうか。天皇自身には天子意識はないだろうから、主権者が天皇、天皇制について考える絶好の時宜を得た著といえる。

日本近代文学専攻の私は上代・古代の歴史に疎い。歴史学研究会編と東京学芸大学日本史研究室編の『日本史年表』、『日本の歴史』および『女と男の日本史』他を漁ってみたが卑弥呼が初出で天照大神や神武天皇は神話だ。卑弥呼と天照大神は同一人の説もあり、初代天皇・神武天皇の祖先が天照大神というが伝説上の人物らしい。AI時代に神話・伝説を天皇家の祖先として仰々しい儀式を勤めねばならぬ身はさぞ辛かろう。

本書の本文は「序章 上代、古代の天皇家と女性たち」に始まり、第一章「古代における(女性天皇)の登場」から第十四章「象徴天皇制と天皇家の女たち」までがA5判型に五五字×二二行で三九五頁びっしりなのだ。読了するには根気がいる。「序章」の中見出しの始めの「古代日本の天皇一族の『血』に塗れた抗争」がいみじくも表題を端的に表しているが、耳慣れない名詞の錯綜に苛立ちながら読み進むうちにいつの間にか惹き込まれている。皇親族間の覇権争いは凄まじく、三二代崇峻天皇は即位後六年で暗殺されたとか、天皇制の確立は三六代孝徳天皇時代ということなども初めて知った。唯一最高の権力者としての機構を支える「官人組織」が作られ、権力の基礎固めに民は田租、調・庸・徭役・人頭税の負担を課せられ、「奴隷的収奪」制度ができたのだった。『東京新聞』の「税を追う」で知った税の内実、貧富格差はこんな大昔から引き継がれていたのだ。権力を握った天皇による寺院、宮殿、庭園造営の大規模土木工事は民衆を苦しめたが、一方で、乱脈な血脈関係にあって跡目相続抗争は殺害、自害、呪殺など血なまぐさい幾多の悲劇を生んでもいる。皇位継承は嫡流男子優先ではなく十代八人の活動的女性天皇もいる。古代天皇家の歴史は血塗られている。それには一夫多妻妾の側室制度にもよるだろう。側室の多さは子沢山につながるが二歳三歳で死ぬ子が多い。後宮制度の確立は七〇二年の大宝令によるがそれ以前の聖武天皇の妻は藤原氏の権勢を背景に娘を送り込まれていて万世一系は崩れている。桓武天皇の母は百済王家からきていて大和純血説も破綻している。桓武天皇の後宮は名前の確認されている者だけでも三二人いて四人が百済系である。その息子の嵯峨天皇も父に劣らず色好みの多妻妾で五〇人(皇子二三人、皇女二七人)の子をもうけている。ちなみに光孝(四六人)、醍醐(三八人)で、天皇一人当たりの平均が二七・一人、その子を産んだ女性は名前不詳者も含めて一八・七人の数字が出されていて明治天皇まで続く。詳述紹介できないのが何とも残念。文学用語だが面白さ抜群の書だ。当時首相だった森喜朗氏の無知暴露の「日本は天皇中心の神の国」発言には度肝を抜かされた。

厖大な資料を駆使した(巻末に一覧表が欲しかった)君主による「国家の現実的統一」は「生殖活動」で、「差別を隠蔽するためにつくられた装置が天皇制」であるが結論となる本書刊行の意義は高く、提起された問題は重い。実に興味津々の主権者必読の書。
この記事の中でご紹介した本
天皇家の女たち 古代から現代まで/社会評論社
天皇家の女たち 古代から現代まで
著 者:鈴木 裕子
出版社:社会評論社
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