私が総理大臣ならこうする 日本と世界の新世紀ビジョン 書評|大西 つねき(白順社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2019年6月1日 / 新聞掲載日:2019年5月31日(第3291号)

大西つねき著『私が総理大臣ならこうする』  
大東文化大学 石川 裕也

私が総理大臣ならこうする 日本と世界の新世紀ビジョン
著 者:大西 つねき
出版社:白順社
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 私の専攻は江戸文学、しかも古典籍の筆記体の解読という特殊なことに関心がある。それでも、専門にこだわらず読書をしているつもりだが、ハウツーものとか、自己啓発本は手に取らない。どちらかと言えば、経済書も同じだ。そんな私が本書のような未踏の領域の本で発見したのは、意外にも文学の本質に近いものだった。

そもそも「もし――ならば、……だろう」は、ファンタジー文学の基本的語法で私にはなじみやすい。しかし、「もし私が総理大臣なら、どうする」という限定された質問には、ファンタジーを感じない。第一、今の政治状況ほど、夢や希望と乖離した世界はないのではなかろうか。

こうした現実の在り方に不満や疑念をぶつけたとき、この本から見えてきた〈純粋な希望〉のビジョンは示唆的で、まことに刺激的な読書になった。一言でいえば、希望に満ちた新世紀の在り方の一つを描く国家経営計画書なのだ。

本書は「お金の発行=借金の発行」となる現在の「信用創造」というシステムが、「借金大国日本」や経済格差など多くの政治経済問題の原因だとして、その本質を改めて問い直す。そして「私たちは何故働くのか」、本質を突き詰めれば〈何のために生きるのか〉という普遍的な問題までも「国家経営」という一つの枠組みの中で取り上げ、これからの社会の在り方を提示する。

著者は「世の中に必要なものを作り、それを提供するのが仕事である時代が間もなく終わる」と大胆に宣言する。日本は戦後、資本主義に基づく政策で成功してきた。しかしそれは、二度の大戦による「基本的にモノが不足した時代」に必要な拡大生産、拡大消費を高い生産性により実現してきたからである。しかし、作業の機械化や情報システムの普及で効率化が進み、多くの人にモノが行き渡るようになった現在では、すでに資本主義は行き詰まっており、そのエンジンである金融システムにも限界がきているのだという。それは、効率化の果実である「労働時間の短縮」が十分に実っていないことからも明らかだろう。

国家経営において重要なのは正しい現状認識であり、「お金の発行の仕組み」という世の中の常識すらも考え直す必要があるようだ。そのためには「全てを疑うマインド」、つまり〈ゼロから本質に基づいて考える〉ことがこれからの新しい時代を生きるには大切だ、と。

人々が「労働」という名の「お金への隷属」で時間を搾取されることから解放されることで、貨幣価値に換算できない多種多様な価値観が生まれる。少なく働いて十分な給料をもらい、個人の時間を大切にできる社会など、まるで夢のようだが「そんな夢こそ、我々は見なければならない」と著者は力強く訴える。これは文学的理念と共鳴する現実の在り方に対する固有の声として私には聞こえてきた。

「お金の在り方」という社会基盤を見つめ直し、まだ見ぬ未来を描こうとする本書と、フィクションの世界を通して現実を問う文学は、どうやら〈純粋な希望〉というビジョンで繋がっていたようだ。

最後に、決して蛇足ではない一言。もし私が総理大臣になったら、明日にでも実施したい経済政策がある。それは書籍・雑誌にはいっさい税金を掛けないことである。
この記事の中でご紹介した本
私が総理大臣ならこうする 日本と世界の新世紀ビジョン/白順社
私が総理大臣ならこうする 日本と世界の新世紀ビジョン
著 者:大西 つねき
出版社:白順社
以下のオンライン書店でご購入できます
「私が総理大臣ならこうする 日本と世界の新世紀ビジョン」出版社のホームページはこちら
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