連載 スターシステム   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 109|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年6月11日 / 新聞掲載日:2019年6月7日(第3292号)

連載 スターシステム   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 109

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※写真右に記事を回り込ませる
グザヴィエ・ボーヴォワ(中央/ジャン・ドゥーシェ撮影)
JD 
 存在とは、大半の人々の関心にあることです。存在を建造し、存在を製造し、未来に備える。人生を設計し、その枠組みの中に閉じこもることです。要するに、それから先に起こることに対する保険です。そして、そのような保険は、未来を所有する態度に他なりません。しかし、生とは、瞬間であり、その瞬間の寄せ集めです。決して思い通りにすることはできず、所有することはできません。私の個人的観点では、非常に重要な事柄です。所有とは存在のためにあり、生に反するものなのです。
HK  
 タルコフスキーの言っていたことをご存知ですか。彼も、ドゥーシェさんと同じように、映画とは生であると述べていました。彼にとっての生は、詩性を通じてこそ表現されるものであったようです。
JD 
 タルコフスキーは、本当に重要なことしか述べていませんでした。彼の述べるように、生とは詩によってこそ表されるものです。しかし、私の観点では、生とは決して詩によってのみ表せるものではありません。しかし、映画表現において、詩的表現が必要なのは、全くもって事実です。
HK  
 タルコフスキーは、ドゥーシェさんの気に入っている作家の一人ですよね。
JD 
 はい。私は、昔からタルコフスキーの映画を評価し、重要視してきました。先日の、シネマテークのレトロスペクティブの際には、彼の映画について話す機会がありました。
HK  
 タルコフスキーについて少し補足をします。彼の持っていた考えは、他のロシアの映画作家や芸術家のように、エリート主義的なところがあったはずです。とりわけタルコフスキーに関しては、二〇世紀の科学的論理や経済的世界の中において、どうにかして人々に生命の息吹を見せ、感じさせようとしていました。彼は真っ向から、生の失われた世界に反抗していました。その点、アントニオーニなどとは大きく異なります。
JD 
 私が考えるに、二〇世紀以降において、ありとあらゆる政治が絶大な影響力を持てていたわけではありません。しかし、私たちの世界は、所有という観念に支配された変動の中にありました。つまり、私たちは、所有の時代にいるのです。多くの本物の映画作家たちが、そのような動きに敏感であったとしても不思議ではありません。私個人は、根本的に所有によって打ち立てられた世界に反対です。本来、世界というものは所有で成り立ってはいません。地球は、元々は土地ではなく、所有されるものではないのです。所有という概念は、市場という原則の中にしか存在しません。それが全てではないのです。
HK  
 そのような考え方は、ドゥーシェさんの映画批評にも深く関わっていると思いますが、実際に有効なものだとお考えですか。
JD 
 ただの理想論です(笑)。ただ、革命的であり続けなければならないのです(笑)。
HK  
 態度だけの問題ですか(笑)。ハリウッド映画を見ていると強く感じるのですが、映画の歴史とはスターの歴史でもあった。そして、フランス映画も長年にわたり、スターシステムが不思議な形で生き残っています。一番わかりやすい例として、ドゥーシェさんも作品に関わっていた、ボーヴォワの『ガーディアンズ』を挙げますが、結局のところ失敗作であった。この作品では、ナタリー・バイが裏目に出てしまったのではないでしょうか。
JD 
 とりわけ、彼女の娘であるローラ・スメット(ジョニー・アリディとの娘)が原因です。
HK  
 正確な裏事情は知らないのですが、おそらくナタリー・バイとその娘がスターとされているからこそ、キャスティングすることが強制されたのではないでしょうか。
JD 
 それが映画というものです。残念ながら、映画の世界では、保険となるものが強制されるのです。しかし、その保険が、場合によっては、保険の欠如でもあるのです。
HK  
 不思議に思うのは、ドゥヌーブが近年言っているように、今日のフランスにはスターがいないにも関わらず、映画の世界がどこかでスターシステムに依存しているということです。
JD 
 そこは昔から、変わっていません。

〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹)
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