女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立 書評|坂本 佳鶴恵(新曜社 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年6月8日 / 新聞掲載日:2019年6月7日(第3292号)

女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立 書評
女性雑誌におけるファッションの社会的意味を問う
その歴史的過程と「女の子」文化の成立

女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立
著 者:坂本 佳鶴恵
出版社:新曜社
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女性雑誌とファッションの関係、女性ファッション誌を対象とした書籍は少なくない。それらの多くは、ある特定の時代における雑誌やそのジャンルに限定したものが多い。だが、本書は、その女性雑誌におけるファッション記事の成立から、2000年代に至るまでを、歴史的な変化という縦の糸と、多様な雑誌、または雑誌のなかのジャンルの分析という横の糸から解き明かそうとする、非常に大きな射程を持ったものだ。

その半面、本書のように全体を網羅的に目配りしようとした場合、対象としてのファッション雑誌の全貌をつかむことに主眼が置かれ、結局、時代によって、雑誌によっていろいろあるよね、という相対的、多元主義的結論に陥りかねない。つまり、こういったジャンルと結びついている階級、階層、消費社会、天皇制、グローバル化、ジェンダー化などと、それぞれがもたらす問題の指摘や全体を貫く問いが弱くなってしまうのではないかという危惧を持ちながら読んだ。確かに、ファッション雑誌という対象が前面に出ており、それぞれの論点の掘り下げにもっと踏み込んでほしかった感はあるが、著者は広く目配りをしながらも、全体を通じてビジュアル化したファッション誌が、読者や読者層の女性たちを自己表現する消費の「主体」につくり変えていったことを鋭く指摘している。

もう一点、評者が関心を持ったのは読者欄への注目である。これまでジェンダーからの視点による雑誌研究では、読者欄の内容が読者に影響力を持っていることが指摘されてきた。これらの研究では編集部による選択と編集を経たものであることが前提とされ、読者による投稿は編集部の価値観を自然化するものとして批判的にとらえられてきた。しかし本書では、フェミニズムの影響を受けた1980年代の『MORE』や『クロワッサン』の編集者への聞き取りから、彼らが読者アンケートの回答を重視しながら、広告主や他紙との競争のなかで葛藤していたことを跡づけていて興味深い。

最後に、本書の射程を超えているのかもしれないが、いくつか論点を挙げておきたい。一つは、著者自身も「あとがき」で述べている通り、本書は2000年代以降の雑誌は対象から除外している。近年、女性雑誌を含め雑誌の販売部数は減り、その影響力も低下しているということが指摘されている。グローバル系雑誌、主婦向け雑誌、ギャル向け雑誌などの休刊が相次ぎ、その選択肢も狭まっている。同時に、インスタグラム、ツイッターといったSNSにおける個人の投稿がファッションメディア化している。「ファッションアカウント」や「美容整形アカウント」といったコミュニティが存在し、雑誌以上に濃密な「女の子」たちの自己表現の場となっている可能性があるが、そのような様相はどうとらえられるのだろうか。

本書で検討している雑誌は時代によって異なるが、人気のある雑誌に限定されている。「普通の、一般の、女性たちは何を考え、どう生きてきたんだろうか」(あとがき)と著者も述べている通り、この方法からは広告や消費社会が求める理想的な女性像を描きだすことはできるが、同時に、そういった「理想的な女性」「理想的な主婦」に収まらない女性やその表象を見えなくしているとも言える。

確かに、ポピュラーな雑誌やテレビ番組を通じてファッションはジェンダー規範を強化する方向に作用していると考えられるが、同時に、既存の規範に抵抗したり、壊乱したりするような兆候もあるだろう。本書で対象とされていないサブカル的なファッション雑誌とその文化、「セルフィー」(自撮り)といった実践が、本書で指摘されているような「女の子」文化に対して、どのように位置づけられるのか、どのような作用をもたらすのか、さらなる関心を喚起させられた。
この記事の中でご紹介した本
女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立/新曜社
女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立
著 者:坂本 佳鶴恵
出版社:新曜社
以下のオンライン書店でご購入できます
「女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立」出版社のホームページはこちら
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