アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門 書評|高瀬 康司(フィルムアート社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年6月8日 / 新聞掲載日:2019年6月7日(第3292号)

アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門 書評
制作現場の表現の真理に触れる驚き
アニメ言説へのアクセスの拠点となる本

アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門
編者:高瀬 康司
出版社:フィルムアート社
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イベント映像制作の職に就いた卒業生から、最近アニメ関係の案件が増えてきたのでアニメのコンポジットが分かる本を教えて欲しいと連絡があり、本書を紹介した。正確には、この本の補足資料としてフィルムアート社のウェブマガジン「かみのたね」に掲載されている記事「見てわかる、アニメの撮影――泉津井陽一が図解するコンポジットの基礎」のURLを送ったのだが、直後に本を買うことにしたと返事があった。他に実制作者向けのマニュアル本も紹介したが、そこまでは必要ないと言う。ちょうど良い、こういう本が欲しかったのだ。

「こういう本が欲しかった」 出版されることを知ったとき、筆者の頭の中にも同じ言葉が踊った。

これまでアニメーションについての言説を追いかけてきた人ならば、本書の総勢21名に及ぶ著者一覧を見ただけで、手に取らずにはいられないだろう。片渕須直、京極尚彦らのアニメーション監督。20代から50代まで、世代ごとに特徴的な経歴を持つアニメーター。そして、これまで取り上げられる機会が少なかった撮影監督。さらには、近年重要な発言をしている研究者・評論家の多くがコラムや論考を寄せている。これらの人々の発言が書籍にまとめられ、アクセスの拠点が出来たことが何より意義深い。

しかし、インターネットで本書刊行の告知を目にしたときは、この豪華な執筆者名に目を通すよりも先に、編者と書名を読んですぐに「こういう本が欲しかった」と思ったのだった。この本のタイトルが示すコンセプトこそ、いま必要とされていると感じていたからだ。

筆者は大学で映像制作を教えているのだが、同じ大学で教鞭をとる片渕監督の呼びかけでアニメーション制作に携わった。現場に入って驚いたことは、制作環境がデジタル化される以前の呼称がいまだに使われていることだった。既にこの文章にも記しているアニメーションの「撮影」とは、背景や人物などの静止画像データを、コンピュータのソフトウェアで組み合わせ動画像にする工程のことだ。一般的には「コンポジット」と呼ばれるが、カメラで物理的に撮影していた時代の名残から、アニメーションの現場では今も「撮影」と呼ばれている。

それ以外にも、いくつもの呼称がデジタル化以前と以後のアニメーション制作を架け渡していた。現場で働く人々には聞き慣れた呼称も、現場に片足だけ踏み入れた人間にとっては、表現の真理に触れるような驚きがあった。

本書を読むことで、読者には同じような驚きが訪れることだろう。アニメーションの表現は、制作現場の内側にいなければなかなか理解が難しい。本書は現場の外にいながらも表現の実際に踏み込んだ編者が、制作現場の内外を行き来する言葉によって編んだ表現論入門である。アニメーションについての理解を深めるだけではなく、デジタル化以降の映像表現について、新たな示唆を得ることが出来るだろう。
この記事の中でご紹介した本
アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門/フィルムアート社
アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門
編者:高瀬 康司
出版社:フィルムアート社
以下のオンライン書店でご購入できます
「アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門」出版社のホームページはこちら
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