第18回女による女のための R―18文学賞  贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2019年6月11日 / 新聞掲載日:2019年6月7日(第3292号)

第18回女による女のための R―18文学賞  贈呈式

このエントリーをはてなブックマークに追加
左から友近氏、辻村氏、千加野氏、月吹氏、小沼氏、三浦氏

六月三日、東京・新宿の京王プラザホテルで第十八回女による女のためのR―18文学賞の贈呈式が行われた。八三二通の応募作が最終選考六作に絞られ、大賞は月吹友香「赤い星々は沈まない」、読者賞は小沼朗葉「おまじない」、友近賞は千加野あい「今はまだ言えない」(「どうしようもなくさみしい夜に」改題)に決定した。

選考委員の三浦しをん氏は「大賞の「赤い星々は沈まない」はユーモアがありつつ、夫婦の機微や、老人ホームで巻き起こる人間模様、特に老年になってからの「性」というものを非常に真剣に、人間にとって性や、他者と関わるとはどういうことなのかを、鋭く描き出しています。たとえ若い方が読んでも、これは自分のことを書いた話だと思える、普遍性を宿した優れた作品だと感じました。

読者賞の「おまじない」は、地道に誰からも注目されることなく、毎日を真面目に生きている女性が主人公です。その人がどういう人なのか、読んでいく先に分かる瞬間があって、それがとてもスリリングですし、その瞬間に、これまでの言動や、周りの彼女を見る目が腑に落ちる。小説の特性を生かした作品でした。

友近賞の「今はまだ言えない」、これも社会の主流ではない場所にいる人たちを主人公にしています。どこか弱い立場に追いやられている人を描くことで、いわれなき偏見や、自分とは違う人を良く知りもせず排除することがどれぐらい愚かなことか、あるいはいつ自分が弱者の立場に立つか分からない、そういうことへの想像力を抱かせてくれる。登場人物たちのこれまでの日々を象徴するようなすばらしいエピソードが散りばめられているのも、登場人物たちを、自分のことのように考えて書いているからだろうと思います」

同じく選考委員の辻村深月氏は「「赤い星々は沈まない」というタイトルに期待感が高まりました。タイトルを裏切らない内容で、女性にとっての性欲とは何なのかということを、真正面から描いています。その描き方が紋切型ではない。社会の中で紋切型で捉えられがちな人たちが、実際はどんなことを考えているのかという、内側の声を読めるのが小説だと思います。そこへ想像力を届かせたいというたくらみ、挑戦がある小説です。この小説が最も、女による女のための闘いが感じられる小説だと思い、大賞に推しました。

「おまじない」は、読んでいく中である気づきが訪れます。その場面の転換が見事で、それまで誰かの人生を小説のかたちで読んでいたのが、その瞬間に自分事になります。小説に置かれた彼女の思いは、自分が人生のどこかで体験したことのある思いだったと。

「今はまだ言えない」は、主人公が高校生の男の子ですが、母親とのことが主に描かれ、そこには女性が生きるとはどういうことなのかが描かれています。彼を一人で育ててきた母親と、その母親の仕事に対して彼がどんな思いを抱えてきたのか。彼はこの問題に対しどうあがいて、どう決着をつけるのか。絵がきれいな作品です。季節感を想像させる場面だとか、ささやかな小道具が鮮やかです。私は特にビニールプールが出てくる場面が好きでした。

三作品とも静かな闘いが感じられるものでした。周囲に流されてしまいそうなときに、流されるとしても立ち止まって、自分の見方を確立するという姿勢が、三作品ともにありました」

友近氏は友近賞受賞作について、「フーゾク嬢だった母親との葛藤、教師からフーゾクに戻った先生に、ひと肌に触れることで教わることがある。私生活ではなかなか聞けない話ですが、淋しさを慰めるというのか、こういうことはあるのだろうと、リアリティを感じつつ、もやもやしつつつ…。人生の面白さや儚さ、辛さ、いろいろな感情を芽生えさせてくれた作品でした」と語った。

会場には過去の同賞受賞作家も多数来場し、十八回を迎えますます盛況な、文芸が育つ場としての文学賞を感じさせた。受賞作は「小説新潮」五月号に掲載されている。
このエントリーをはてなブックマークに追加
辻村 深月 氏の関連記事
三浦 しをん 氏の関連記事
受賞のその他の記事
受賞をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究関連記事
評論・文学研究の関連記事をもっと見る >