永井祐『日本の中でたのしく暮らす』(2012) あの青い電車にもしもぶつかればはね飛ばされたりするんだろうな|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2019年6月11日 / 新聞掲載日:2019年6月7日(第3292号)

あの青い電車にもしもぶつかればはね飛ばされたりするんだろうな
永井祐『日本の中でたのしく暮らす』(2012)

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この歌が世に出たのは二〇〇〇年代の始め頃で、まだ短歌を知ったばかりだった私はこれを読んでずいぶん感動したものだったが、ベテラン歌人からの評判がすこぶる悪い一首だった。曰く、当たり前すぎて何が言いたいのかわからない。曰く、社会と闘おうという気概が感じられない。私としては、整然と管理されたプラットホームに立っているときにそういう考えがふいに降りてくることってあるよなあ、とリアルを感じる歌だったのだが。

ただ、現代社会のリアルの浮遊感を表現しているにしては、異様に感じる部分はある。それは「青い」だ。別に赤くても黄色くてもはね飛ばされるのだが、なぜここで色にこだわるのか。車体が青い電車はいっぱいある。首都圏のものだけでも、京急ブルースカイトレイン、西武の20000系や6000系、JR東日本常磐線のE531系(これは青いのはラインだけだが)などなど。

作者が早稲田大学出身のため、早稲田駅を通る東京メトロ東西線の15000系が一番有力なのではないかなあとは思う。しかし、この歌が真っ赤な京急電車の前で思いついたものだという可能性もゼロではない。もしそうだったらどうだろう。私なら、そのまま赤とは詠まない。赤だと直接的に血を連想させる色になってしまって、面白くならない。寒色の青だからこそ、どこか非人間性を醸し出すための演出になりえている。「はね飛ばされ」て行く先は天国ではなく、異世界とかだったりして。(やまだ・わたる=歌人)
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