連載 持つべきか持たざるべきか(シャブロル)   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 110|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年6月18日 / 新聞掲載日:2019年6月14日(第3283号)

連載 持つべきか持たざるべきか(シャブロル)   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 110

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シャブロル(左)とドゥーシェ(2000年頃)
JD 
 映画の世界は、昔から、スターシステムに依存して来ました。私たちヌーヴェルヴァーグが映画製作に乗り出した頃にも、スターシステムは存在していました。しかし私たちは、そのような映画のあり方に、大きな関心を持たなかった。
HK 
 ゴダールは、映画の顔ともいうべきスターについての映画を何本も撮っていました。
JD 
 はい。しかし、ゴダールは、映画史の一部であったスターの持つ神話を利用したのであり、スターによって自分の映画を撮るようなことはしていません。彼の最新作を見ればよくわかることですが、すでに俳優すら演じていません。映画には、スターが必要なわけではないのです。
HK 
 ブレッソンは、「スターシステムこそが、映画の最低の発明である」と非難しています。
JD 
 ブレッソンの語っていた問題群と、それに関わる彼の思考法には、私は昔から距離を取り続けています。ブレッソンは、本当に思い上がりの強い人だったのです。「私こそが芸術なのだ」という態度を取り続けており、すんなりと受け入れたいとは思いません。しかし、そのような態度を除けば、議論の余地もなく、本当に偉大な映画作家です。
HK 
 彼の残した文章からそうした態度は伝わってきますが、実際のブレッソンは自分の作った規則などを、撮影現場で放棄することの経験を語るなど、理論以外の面にも重きをおいていたようです。彼の持っていた理論と作品は、別物なのではないでしょうか。
JD 
 私の話していることは、私が彼に対して抱いていた思いであり、決してブレッソンがおかしなことを言っていたわけではありません。しかし、ブレッソンの大きな問題とは、私があり、私は決して誰とも関わりがない、神でさえ私に影響を与えることはない、私こそが、たった一人で神であるのだ、という態度です。ブレッソンは、昔から変わることなくそのような態度を持ち続けており、私はすんなりと認めることができないのです。しかしながら、こうした態度はブレッソンが映画を作る上で、決して悪いものではなかったのも事実です(笑)。
HK 
 僕は、一九四〇年代から五〇年代にかけての映画作家たちの性格が好きなんです。それぞれが、非常に強烈な性格を持っており、誰もが自分こそが正しいと信じていた時代です。フォードやウェルズのようなアメリカ人は当然のこととして、ドライヤーやロッセリーニのようなヨーロッパの映画作家も、それぞれが自分の映画を作っていました。
JD 
 私の出会ってきた、全ての偉大な芸術家は、独特の世界観を持ち、強烈な性格を有していました。ドライヤーやルノワールのような、見せかけでは人が良さそうな人々も、自分がやると決めたことは、決して譲ることはありませんでした。
HK 
 ロメールに話を戻します。映画作家としてのロメールは、フランスについて、映画を通じて、歴史的な側面から、思索することができた初めての仏映画作家のような印象があります。シャブロルも、ロメールとは違った方法において、フランスについて映画を作っていたのではないでしょうか。
JD 
 シャブロルと、ロメールの関心は異なります。私はシャブロルと長年において良い友人であり、彼の作ってきた映画作品も非常に好きなものです。私がシャブロルの持っていた考えで好きなのは、――ブルジョワのシステムの中にありながら――ブルジョワジーを否定するという考え方です。つまり、存在ではなく所有という考え方の否定です。所有という考え方が、最も重要な力を持つ時代の中に私たちはいます。そして、誰もが所有するということに付きまとわれているのです。しかし、最終的には、私たちは何も手にすることはありません。シャブロルの、全ての映画をよく見ることができるとわかることですが、彼の映画はそのような考えによってこそ成り立っています。シェークスピアは「在るべきか、在らざるべきか」と言っていましたが、シャブロルの見せ続けた今日の社会においては「持つべきか、持たざるべきか」が問題となっているのです。


〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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