又吉直樹×武田砂鉄トークイベント  「違和感の居場所 芸人とライター、書くときに考えていること」  『往復書簡 無目的な思索の応答』刊行記念|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年6月18日 / 新聞掲載日:2019年6月14日(第3283号)

又吉直樹×武田砂鉄トークイベント
「違和感の居場所 芸人とライター、書くときに考えていること」
『往復書簡 無目的な思索の応答』刊行記念

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武田氏㊧と又吉氏

 お笑い芸人の又吉直樹氏とライターの武田砂鉄氏のトークイベントが5月17日、東京・新宿の紀伊國屋ホールで開かれた。二人の共著『往復書簡 無目的な思索の応答』(朝日出版社)の刊行を記念し、「違和感の居場所 芸人とライター、書くときに考えていること」という題でおよそ二時間、対談が繰り広げられた。本書は「東京新聞」と「中日新聞」の夕刊で、16年9月から一年半にわたって交わされた二人の文章をまとめたものである。

「何かを持って帰るという気持ちは捨てていただきたい」(武田氏)という一言から始まったトークは、自分が内側から把握している「精神身長」と実際の身長との違い、各種のうまい棒の味つけの微妙な違い(うまい棒同盟監修『やおきん公認 うまい棒大百科』参照、河出書房新社)、学生時代の野球部とサッカー部、またバレーボール部とバスケットボール部の雰囲気の違い等々、日々の生活や学生時代をめぐり、話題が尽きず続いた。それは、どこか似ているけれども微妙に異なる「違い」に、言葉が与えられていく過程でもあった。

「無理やりそれを目的のある話に変えたら、どうなるんでしょうかね?」と又吉氏が投げかけると、「あのときのあれがあったから今に活きている」とビジネスメソッド風にまとめればいい、と武田氏が笑いを含んで応じ、又吉氏は「人とうまく話せる方法」が主題の自己啓発書を手に取ったとき、それを読んで理解することで少しでも自信をもちたいのに、冒頭に「まず自信をもて!」と書いてあったことに驚いたと、笑いを重ねた。

またテレビの現場などで、人に会うたびに「内容のない褒め言葉」をかけられるのはしんどくはないか、「言葉を一個一個引き受けちゃう又吉さんだと、引きずっちゃうんじゃないですか」と武田氏が問いかけると、「どうしたの、こんなに褒めているのにうれしくなさそうだね」と言われることを避けるために、いちいち気をつかって感謝の意を伝えるのは、「この無目的な思索の応答の、百倍くらい無目的です(笑)」(又吉氏)。

なかなかうまく話せずにコミュニケーションに悩んでいるときには「話している自分をまた別の自分が見ている」と考える武田氏は、「どうしてそんなに心の中でしゃべっているのか」とよくきかれるという。世の中には「心の中に声がない人」がいるのか、いるとすればどのような感覚をもっているのかについても、二人のあいだで示唆的な考えが交わされた。相手の言葉をていねいに受け止め、それを踏まえて自分の言葉で応答することができるのは、自分が抱く違和感や疎外感、劣等感にふさわしい言葉を、日々探しているからこそだろう。

同書『往復書簡』にも「違和感を積もらせてきた記憶と、積もらせている現在を報告し合うような、違和感を嗜むやりとりが続きました」(武田氏)とあるように、きめ細やかな言葉づかいで、まるで読者である私自身のことを言い当ててくれるような文章が綴られている。あらかじめ目的地が明確に設定され、そこにいかに速く効率的に行き着くかが求められることが多いなかで、自由で貴重な一冊となっている。トークイベントは、心地よい笑いに包まれ、盛況のうちに幕を閉じた。
この記事の中でご紹介した本
往復書簡 無目的な思索の応答/朝日出版社
往復書簡 無目的な思索の応答
著 者:又吉 直樹、武田 砂鉄
出版社:朝日出版社
以下のオンライン書店でご購入できます
「往復書簡 無目的な思索の応答」出版社のホームページはこちら
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