日本のアニメーションはいかにして成立したのか 書評|西村 智弘(森話社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年6月15日 / 新聞掲載日:2019年6月14日(第3293号)

日本のアニメーションはいかにして成立したのか 書評
日本アニメ史の多様性を新たな視点から掘り起こす

日本のアニメーションはいかにして成立したのか
著 者:西村 智弘
出版社:森話社
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 三年前の『君の名は。』の記録的大ヒット、二年前の国産アニメ生誕一〇〇年、そして、まさに現在放送中の戦後草創期のアニメ産業を題材にしたNHKの朝ドラなどの話題が重なり、いまや国を代表するメディア産業にまで発展した日本のアニメーション(アニメ)に、近年、かつてなく注目が集まっている。ここ数年、良質の研究書の刊行も相次いでいるが、本書もまた、今後、私たちがアニメ文化史を語る上で欠かせない一冊になるだろう。

本書は、黎明期の一九〇〇年代からデジタル時代を迎えた二〇〇〇年代までを扱った日本アニメーション一〇〇年の通史である。とはいえ、すでにある類書から本書を決定的に分かつ著者独自の構想は、「アニメーションの概念が日本の歴史のなかでどのように生まれ、発展したのか」(一三頁)を探ること。つまり、日本における時代ごとのアニメーションをめぐる呼称や概念の多様性と変遷に初めて体系的に注目し、それによって、いまだ知られざる「オルタナティブの日本動画史」を浮かび上がらせるという、きわめて野心的なプロジェクトである。

それゆえ本書は、これまで主流だった日本アニメの事項以外にも、戦前のアマチュア映画(第三章)やノーマン・マクラーレン作品の受容(第四章)、また現代のアートアニメーション(第六章)など、どちらかといえば「周縁的、境界的なアニメーション」(同)へも、半ば必然的に多くの視線が注がれることになる。

本書の議論の中核にあるのは、アニメーションをめぐる多様な呼称の精細な言説分析を通じて、アニメーションの定義(概念)が、対象に向ける視点の違いから、戦前と戦後で大きく異なっていたという鮮やかな主張だろう。著者によれば、今日のアニメーションという概念が確立される以前の戦前の日本では、それに該当する作品群は「漫画映画」「影絵映画」「人形映画」などなど、実に多種多様な呼称で呼ばれていた。そうした雑多な作品たちが、戦後になって「コマ撮り」という手法を基準にアニメーションという一つの概念の下に集約されていく。その定義の変化を、いわば「作品がどのように見えるか」という「観客の立場」(戦前)から、「いかにして作品がつくられているのか」という「制作者の立場」(戦後)への移行と要約する部分には、著者の洞察が光っている。

その他にも、戦中期の映画検閲の場で案出された「描画」といういまでは耳馴れない呼称が、戦後に先駆けて、アニメーションをコマ撮りという側面から定義していたこと(第二章)、また、戦後のテレビアニメに必要悪として導入されたことで、一部(宮崎駿ら)から反発も呼んだリミテッド・アニメ技法には、実験アニメーション作家たちの作品表現からの大きな影響があったこと(第五章)など、ほぼ知られていない、あるいは著者の見立てによって新たに説き起こされるような、目を瞠る指摘に満ちみちている。

日本アニメ新時代に向けて、その歴史に新たな光を当てる労作である。
この記事の中でご紹介した本
日本のアニメーションはいかにして成立したのか/森話社
日本のアニメーションはいかにして成立したのか
著 者:西村 智弘
出版社:森話社
以下のオンライン書店でご購入できます
「日本のアニメーションはいかにして成立したのか」出版社のホームページはこちら
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