燃えよ剣 上 書評|司馬 遼太郎( 新潮社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2019年6月15日 / 新聞掲載日:2019年6月14日(第3293号)

司馬遼太郎著『燃えよ剣 上・下』

燃えよ剣 上
著 者:司馬 遼太郎
出版社: 新潮社
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燃えよ剣 上(司馬 遼太郎) 新潮社
燃えよ剣 上
司馬 遼太郎
新潮社
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燃えよ剣 下(司馬 遼太郎)新潮社
燃えよ剣 下
司馬 遼太郎
新潮社
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幕末に活躍した人物は誰か、と聞かれたら貴方は誰と答えるだろう。私は誰をおいても、新選組副長土方歳三と答える。新選組とは、幕末に尊王派を統制した、浪士で結成された佐幕派の警察機構のことである。活躍した期間は短かったが、池田屋事件や戊辰戦争など歴史に重大な影響を与えた。本書には、新選組副長土方歳三の、多摩時代から新選組結成、各地との戦闘、そして函館戦争で戦死するまでの「喧嘩士」としての生涯が事細かに描かれている。

この本を読んで、私は土方歳三の生き方にあこがれ、また魅了された。土方は自分の人生のすべてを新選組局長近藤勇のため、また新選組のために生きた。一回しかない一生を自分以外の何かのために捧げることは容易ではない。私には、今までに一生を捧げて頑張りたいと思えるものがなかった。好きなことや趣味はあるが、それを生業にして生きていこうというほどの熱量を持っていない。私はこの本に出合うまで人生に目的も無く、なんとなく日々を過ごしてきた。幕末と現代では世の仕組みや人の考え方が違うから、そのような生き方ができると言う人もいるかもしれない。しかし、土方は周囲の目を気にせず、ただ新選組の強化、近藤勇をたてるために生きた。この信念を貫き通すことは、時代に関係なく成し遂げることは非常に難しいと私は思う。江戸時代は今とは違い、身分制が敷かれた社会である。その時代に、自分の意見を主張し続けることは並大抵のことではないと想像する。

特にそう思ったのは、新選組総長山南敬助が脱走した時の沖田総司と土方の会話である。総長と副長は同格の身分であるが、隊士の直接指揮権は副長にある。総長は、局長の相談役という職務しかなく、ほとんどの隊士は山南が、そういう仕組みを作った土方を憎んで脱走したと考えていた。また、ほとんどの隊士は、土方を憎んでいた。沖田は、山南の脱走を機に土方が隊士から嫌われていることを知っておくべきだといった。土方は、平然と「知っている」と答えた。「おれは副長だよ。思いだしてみるがいい、結党以来、隊を緊張強化させるいやな命令、処置は、すべておれの口から出ている。近藤の口から出させたことが、一度だってあるか。将領である近藤をいつも神仏のような座においてきた。(略)副長が、すべての憎しみをかぶる。(略)新選組てものはね、本来、烏合の衆だ。ちょっと弛めれば、いつでもばらばらになるようにできているんだ」と。

自分の信念を突き通すには、代償が必要だ。土方は、新選組、近藤のために隊士から憎まれることを選んだ。人から憎まれることは、つらいことであるが、その道を選んでも成し遂げたいと思う気持ちは誰でもできる行為ではない。

また、土方は戊辰戦争中に近藤を失いながらも、新政府軍に立ち向かい勝利を掴むため様々な作戦を練った。近藤を失っても自分の道を貫き、最後は、函館で敵からの銃で撃たれ落馬し、息絶えた。最後まで信念を貫いて生きた土方の人生は、美しく崇高だと私は思った。

本書は、土方がどう生きてきたのか詳しく描かれており、まるで土方と同じ時間を過ごしているような感覚になる。人生の目的もなく漠然とした日々を送っている、そんな人に本書を読んでほしい。何かのために尽くす、ということが美しく、素晴らしいことだと気づくことができ、意義のある人生にしようと思える一冊であるからだ。
この記事の中でご紹介した本
燃えよ剣 上/ 新潮社
燃えよ剣 上
著 者:司馬 遼太郎
出版社: 新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
燃えよ剣 下/新潮社
燃えよ剣 下
著 者:司馬 遼太郎
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
「燃えよ剣 下」出版社のホームページはこちら
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