橋爪大三郎講演 載録 トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年6月21日 / 新聞掲載日:2019年6月21日(第3294号)

橋爪大三郎講演 載録
トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①

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第2回
宗教改革から米建国まで
次にトランプを支える大きな存在である「福音派」について、その成り立ちから解説された。
一五一七年、マルチン・ルターが教会の門に九五か条の論題を貼り出し、贖宥符問題を契機に腐敗したカトリック教会を批判した、いわゆる宗教改革が起こった。このときカトリック教会から分離したのが、ルター派。この同じ出来事を、カトリックでは教会分裂と呼ぶ。

プロテスタントの主流派は、フランス人のジャン・カルヴァンが、ルターのカトリック批判を徹底させたカルヴァン派。  カルヴァン派は、ヨーロッパの近代化に役立った、と橋爪氏。
「マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』には、カルヴァン派のことばかり書かれています。カルヴァン派の主張は一言でいうと、「神さまは偉い、人間は罪深い」というもの。神を信じたら救われるなどと、カルヴァン派は考えません。信仰は神の恵みで、救うか救わないかは神の勝手。しかし神が自分を愛しているのかどうか、救われている証拠が欲しいので、試しにビジネスに励んでみようとする。すると儲けることができた。やはり神様は私を愛していたのだと、さらに利益を投資する。そのようにして、資本主義となりました。カリカチュアのような説明ではありますが、カルヴァン派によって人間の行動が合理化され組織されて、資本主義や近代国家が生まれた、というヴェーバーの主張は、ほぼ正しいと私は思っています」

イギリスでは、カトリックから分かれた、英国国教会が樹立。しかし一夜でカトリックから看板を架け替えたため、中身はほとんどカルヴァン派だった、と橋爪氏。国教会のトップには、イギリス王ヘンリー八世が立ったため、イギリス王が偉いのか、イエスが偉いのか揉めることになる。
「イギリス王が偉いと考える側は非分離派といい、英国国教会に残りました。それに反旗を翻す人びとは、国教会を出ていき、これを分離派といいます。分離派は、イエスの言葉にしか耳を貸さず、教会の偉い人たちのいうことはききません。ですから信仰共同体はできるけれど、リーダーは生まれない。そこで物事を決めるのに、皆で相談することになります。これを会衆=コングリゲーションといい、分離派にとっては、投票・多数決で物事を決めるコングリゲーションが信仰の母体であるのです」
そして話の舞台はアメリカへ。
「ピルグリム・ファーザーズとは、アメリカに渡ったピューリタンですが、彼らは分離派の人びとです。迫害から逃れたところが、風に流され思ってもみない場所に辿り着いてしまった。上陸してその地に社会を築くために、自分たちで法律を作ります。メイフラワー契約を結び、プリマス植民地を建てるという、契約によって社会を作る、世界で最初の試みをしたのです。アメリカ人は、いまでもこのことを誇りにしており、州を作るときも、合衆国を作るときも、契約によって自分たちの信仰を守る組織を作りましょうと。これがアメリカの原点です」

橋本氏は「各州の成り立ちは、どの教会の考え方に属するかで分かれている」と説明する。

例えば、マサチューセッツ州はカルヴァン派。ペンシルバニア州は、ウィリアム・ペンが作ったクウェーカー教徒の州。
「クウェーカーは、カルヴァン派から迫害を受け、ニューヨークから追放されて、ペンシルバニア州を作りました。クウェーカーは寛容なので、他の虐げられている宗派、メノナイトやアーミッシュなどもやってきました」
バージニア州は、英国直轄領だった時代があり、国教会。ロードアイランドは、マサチューセッツ州で迫害された人たちが宗教的寛容を求めて作った州。そのため、アンチ会衆派で寛容である、という。

「そうなると独立十三州が集まるときに、特定の教会の考え方で推し進めることはできません。そこでどの教会にも対等な立場として、大統領を選挙で選び、四年で交代するというシステムを、世界で最初に作りました」

アメリカの教会の主流派は、バプテスト、メソジスト、プレスビテリアン、ルター派。

「バプテストはイギリスで生まれ、アメリカで大発展した教会です。バプテスマ(洗礼)以外、他の教会の洗礼は認めません。メソジストは、英国国教会から出たグループですが、厳格で禁酒運動などを行います。プレスビテリアンは、組織の上の人の命令をよく聞きます。コングリゲーショナルとは反対です」

準主流として、コングリゲーショナル(会衆派)、現在は小規模化したエピスコパルがある。

「エピスコパルは、英国国教会が独立戦争で分離して、アメリカの聖公会になりました。また教会としてアメリカで一番大きいのは、カトリックで、ヒスパニックの人たちが大勢所属している。

クウェーカーは、神様と内なる光(聖霊)で直結すると考え、牧師はいない、洗礼も、パンと葡萄酒もない。聖霊で神と繫がっているので、イエス・キリストも必要ない。

アドヴェンチストは一〇〇年ぐらい前のごく最近出て来たものですが、イエス・キリストが再来する瞬間を、今日か明日かと待ち続けている、信仰深いグループです。

それからユニタリアン・ユニバーサリスト。三位一体説(トリニティ)を認めず、イエスは神の子だと認めない。合理的で理解しやすい考えです」

そして、モルモン教、エホバの証人、クリスチャン・サイエンスなどのキリスト教には含まれない新興宗教も、アメリカには山ほどある、と話す。
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