橋爪大三郎講演 載録 トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年6月21日 / 新聞掲載日:2019年6月21日(第3294号)

橋爪大三郎講演 載録
トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①

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第3回
福音派とは何か

その前提の上で、福音派とは何か。

「福音派とは、教会の名前ではありません。宗派横断的な存在で、福音派を私なりに定義すると、聖書を「神の言葉」と信じる人びと。福音派はバプテストにも、メソジストにも、プレスビテリアンにも、ルター派にも、もっと小さな様々な教会にもいます。

キリスト教では、神の言葉として、聖書を信仰の根拠としています。その中でも、聖書と人が書いた本を並べたときに、聖書を信じるべきだと考えるのが福音派です。人が書いたものには例えば、生物学、進化論、天文学などの本があります。それらが聖書と矛盾するならば、聖書の方を信じると、思考の根拠が聖書であるのが福音派です。

福音派は、アメリカの古き良き時代、二~三〇〇年前の開拓農民の考え方に近い。開拓農民は都会を離れ、家族で労働して、安息日には教会に集まり、信仰を持って、自分の人生の意味を考えた。これがアメリカの原点です。家にある本は聖書と料理の本ぐらいだから、聖書を繰り返して読む。そのうちに、だんだん聖書的な目で世界を見るようになる。

しかし最近では、農業が機械化され、人と人の交流も薄くなり、心が寂しい暮らしになっています。昔のような聖書の読み方や、交流、神との繫がりを求める気持ちから、福音派になろうと思う人が現われているようです。

福音派は、困ったときこそ、神の言葉には間違いがないのだから、聖書に従っていれば大丈夫だと考えます。だから世の中が複雑で情報に溢れ、混乱するときに、情報を遮断して、原点に戻って自分を立て直そうとする。こういう人たちだから、社会が加速度的に進むときに、遅れを取ったり、落ちこぼれる。福音派には代表者はいません。だからこれまで選挙には熱心ではなかった」

アメリカには、宗教リベラルといわれる人たちも約一億人いるという。 「彼らは教会に行く代りに座禅を組んだり、ホットヨガをやったり、ベジタリアンになったり、キリスト教と関係のない個性ある人生を追求しています。こういうさばけた人たちが都会には大勢いますが、それでも三億人のうちの一億人です。

もう一億人は、先ほどの主流派の人たち。この人たちは、どちらかというと穏健派で、エスタブリッシュメントです。

そして福音派は、はっきり分からないですが五千万人はいると思います。これから一億人になるかもしれません。

福音派の人たちの投票の基軸は、候補者が信心深いかどうかです。政策など二の次。それでトランプも、福音派の票を得るために、「中絶反対」といい出しました。

民主党は、福音派からはほとんど得票がなく、主流派とリベラルから集票しています。主流派とは中道です。共和党は中道と宗教右派から主に集票しますが、宗教は浮動票で確実性はない。そう考えると、民主党の方が少し優勢になるはずが、二〇一六年、トランプは中道の票も福音派の票も取って、ヒラリーより優勢になりました」
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