橋爪大三郎講演 載録 トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年6月21日 / 新聞掲載日:2019年6月21日(第3294号)

橋爪大三郎講演 載録
トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①

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第4回
トランプ政権の背景

トランプが出て来た理由の第一に、アメリカの中流階級の没落がある、と橋爪氏。

「九〇年代辺りから、アメリカの経済政策が変わり、一言でいうと労働配分率が下がりました。追い上げてくる他国に負けないように、アメリカ国内での労働賃金を抑圧し、移民労働者を入れ、ホワイトカラーはブルーカラーのようになり、アメリカの産業を底支えしようとしたのです。

アメリカでは、大企業も銀行も、量販店やチェーン店、航空会社もバタバタ倒産しています。アメリカの年金システムは企業年金で、会社が退職者に支払います。でも潰れてしまえば払わなくて済む。潰してから新会社として発足すると、鉄下駄がとれて利益が上げやすい。しかし放り出される従業員はひどい目に遭う。こういうことが平気で起こっているのが、アメリカのM&Aです。

医療費も天井なしで高くなっています。公的保険はないので、企業の医療保険に入れない人たちには、医療費が高すぎて払えない。市販薬のアスピリン等を飲んで我慢するしかありません。オバマケアでいう「国民皆保険」は聞こえはいいですが、全員が民間保険に入るということです。所得の低い何千万もの無保険だった人が全員、保険に入ると、医療費がかさみます。民間の保険会社は保険料を値上げしないと成り立たなくなり、これまで普通に保険に入っていた中産階級の人たちの保険料が、倍に上がるという事態になるのです。それが国民皆保険といい出したオバマのせいであり、民主党のせいだと。中産階級が共和党支持に回った力学が、ここにもあると考えられます。

大学の学費の高騰も問題です。私立大学は年間五~六万ドル、日本円で六百万円程かかります。たいていの人は奨学ローンで払うしかなく、卒業時に二四〇〇万円の借金を背負って世に出ることになる。しかも大学新卒者の職がない。だからバーニー・サンダースの大学無償化が、党大会でヒラリーと競るほど、熱狂的な支持を得ました。

こういう厳しい状況で不満が鬱積すると、極端な考えに走り、白人至上主義やネオナチが出てくるというわけです。イスラムや中国をターゲットにして、自国が上手くいかない理由を、国の外に置こうとする、こうしたストーリーに現実を見ようとする大勢の平均的アメリカ人が、トランプ政権の背後にいるのです」
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