橋爪大三郎講演 載録 トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年6月21日 / 新聞掲載日:2019年6月21日(第3294号)

橋爪大三郎講演 載録
トランプのアメリカ/宗教で読み解く世界①

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第5回
トランプ再選へ

次の大統領選本選挙は二〇二〇年十一月上旬に行われるが、選挙戦は既に始まっている。民主党から出馬を表明したのは六月初旬の段階で二三人、過去最多となる。橋爪氏は、次期大統領選を、こう予測する。

「共和党からはトランプが指名されると思います。四月末に、マラー特別検察官の報告書が出ました。トランプがロシアと接触したという出来事が調査されたのです。そのトピックは、自身が訴追されそうなときに、トランプが司法長官に圧力をかけ、司法妨害したのではないかという点。実際に捜査を妨害していれば不法行為ですから、これは必ず弾劾されます。しかしマラーは一年かけて捜査しましたが、結論ははっきりしなかった。しかもバー司法長官は、その公開を渋っている。この問題がクリアされると、トランプに強力な対立候補は共和党の中から出てこないでしょう。

民主党から、ヒラリーは出ないでしょう。出ても負けますから。ジョー・バイデン前副大統領が、現在三五%で支持率トップです。ただバイデンは古いタイプの政治家で、中道なのはいい点ですが、パッとしない。トランプに勝てないのではないかと思います。それを追いかけるサンダース。彼は四年経っても主張は同じ。問題はサンダースと似たことをいう他の候補がたくさん出てきて、埋没気味であること。その内から有力な候補を二人だけ紹介すると、ブティジェッジとベト・オルークです。民主党は混戦模様で、それぞれ素晴らしい人材ですが、トランプに勝てるとは予測できない。トランプ再選の可能性が高いと思います」

最後に、ポストトランプ時代が示唆された。

「トランプは、リベラルや大きな政府に反対。多様性、融和、国際協調といった民主党的な政策に反対。いまイランと喧嘩しそうですし、既に北朝鮮や中国とも闘っている。アメリカの国益をはっきり主張します。この姿勢には民主党内にも支持があります。

ただアメリカ一国主義を掲げることで、アメリカの国益が追求できるかというと、疑問です。

アメリカの覇権には二つの基礎がある。一つはアメリカの強力な軍事力です。しかし日本も含めて各国に基地があり、各国がアメリカを必要としているという体制でこそ、その強力な軍事力が機能しているわけです。

それから強いドル。ドルが基軸通貨だということです。アメリカはたくさんの貿易、歳出の赤字を出している。しかしいざとなればドルを印刷して、世界中の借金を払ってしまえばいい。そうなればインフレになり、ドルの価値が下落しますが、困るのはドルを外貨保有している各国ですから、何とか買い支えて価値を維持しようとする。強い軍事力、強いドル、どちらも国際的なネットワークあってこそ、維持されるものなのです。

世界を仕切り世界にサービスして、それを通じて自国の国益を手に入れる、それが覇権国です。でもこれからのアメリカにそれができるかどうか。アメリカは中国との関係も、EUとの関係も、イスラムや日本との関係も再定義しようとしています。再定義とは簡単にいえば、アメリカに有利に、関係国には不利に、変えようということです。

このままいくと中国のGDPがアメリカを追い越します。そして中国は一帯一路で、取巻き国を増やしています。こうした中国の伸長をアメリカが押し戻そうとするならば、アメリカにも協力国が必要です。トランプはこの危機が分かっているのかどうか。

アメリカはもともと、信仰の自由と民主主義の歴史を、コアの価値とする国です。でも実際にはアメリカの国内は分裂しています。中道政治家がいなくなりつつある。

中道が力を持つために、アメリカで有効なのは、皆で力を合わせてフロンティアを広げることです。昔は西部があった。アポロ計画で月に行ったり、冷戦を闘ったりしました。しかしいまはフロンティアがなく、個々に分断して、アメリカは迷走しています。フロンティアの候補として、グリーン・ニューディールや、ハイテク革命がありますが、トランプは乗らないでしょう。アメリカは世界に関与する理念も余力もなくなり、世界の警察を続けられないといっています。しかし孤立主義では、覇権は維持できない。今後は徐々にワンオブゼムになり、主役のいない世界になっていくのではないでしょうか。

再選されたとしても、少なくとも六年経ったらトランプがいない世界になります。トランプが辞めた後、世界はどうなるのか。その時は必ず来ます。だからポストトランプの準備をしておかなければならない。それには現状の深い洞察と分析が必要です。皆さんにもお出来になると思います」       (おわり)
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