【横尾 忠則】戦争の物騒な夢多し。わが日記は日記にあらずか?|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年6月25日 / 新聞掲載日:2019年6月21日(第3294号)

戦争の物騒な夢多し。わが日記は日記にあらずか?

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2019.6.10
 週刊朝日の編集長森下香枝さんと副編集長の木元健二さん雨の中来訪。瀬戸内さんとの往復書簡の連載依頼。瀬戸内さんのペースでは月一回ぐらいでしょう、と。そんなことないです、瀬戸内さんなら毎週平気ですよ。じゃ隔週? ぼくから瀬戸内さんの考え聞きます。
2019.6.11
 〈郷里ノ町デモアルシ、モー少シ大キイ街デモアル。ソノ街ヲ低空デ米軍ノステルス3機ト2機ノUFOガ編隊ヲ組ンデ物凄イスピードデ飛行シテ行ッタ〉。ステルス機とUFOの合同訓練なんだろうか。

南天子画廊の青木さん、パンのお土産を持って、来年創業60年になるので個展をという話で来訪。自画像をテーマに。壁に自画像ばかりが並ぶのを想像してみる。難題だけれど、受身主義だからやってみるかな、ウーン?

夕方までに『文學界』の新連載の第1回分20枚書き上げる。
SCAI THE BATHHOUSEにて(撮影・本木雅弘)
2019.6.12
 〈雨ノ夜、黒イレインコートノ男ガ土足ノママ入ッテ来テ、何ヤラメモヲ取ル。110番ニ電話ヲスルト逃ゲルヨーニ消エル〉

〈タマダカオデンダカガ蛇を獲ってきたので大騒動〉

『豊島横尾館ガイド』(河出書房新社)の発刊打上げ会の予定だったけれど塚田さん風邪で来られないというので延期する。

『文學界』の清水さんに新連載の文章20枚入稿。タイトルを「原郷」にしたいと。内容は絵画だけれど、エッセイでもあり、小説でもあり、絵画論でもある。清水さんの担当作家は山田詠美さん、平野啓一郎さん、磯﨑憲一郎さん、皆お友達ばかりだ。

30年前の絵を引っぱり出して加筆するつもりだけれど、どこまで突き放せるか?

本木雅弘さんがSCAIの個展を見に行ってくれて、作品と自撮りした写真を送ってくれる。メールに、昔、アトリエにおはぎを持って行ったら、ぼくの食べ方に怪物的な力を感じて感動したのを今でも憶えていると。好物だからかぶりついたのかも。
浜松町のタリーズコーヒーにて、みうらじゅんさん、岸川真さんと(撮影・徳永明美)
2019.6.13
 朝はヒンヤリしていたけれど昼前からうんと暑くなってきた。

瀬戸内さんのメールでは、何んぼでも書くので、毎週連載OKの返事。

ラジオは滅多に出ないけれど、個展のPRをしてもらえるので文化放送の「大竹まことゴールデンラジオ」に出演。大竹さんと親しい作家の岸川さんも駆けつけて、応援? 大竹さん、パートナーの光浦靖子さんも個展を見に行ってくれていて、絵の話が中心だけれど、大竹さんは「色などあんな風に見えてるのか?」と。あんな風に見えたら危なくて歩けないでしょう。終ったあと、岸川さんとお茶を、そこへみうらじゅんさんが入ってくる。帰りは三鷹の岸川さんの家経由で。随分時間がかかる。車の中で岸川さんしゃべりっぱなし。
2019.6.14 
はなるべく敬遠しているけれど、最近は自主的にやりたい仕事が依頼されるよーになっているのは三島さん流にいえば無意識がなくなって意識と無意識が一本化されているのかな。

全日本コーヒー協会が出している「Coffee Break」誌の取材。コーヒーは焼芋がこげたような匂いがするのでもうひとつだったけれど高倉健さんと行くコーヒー屋のコーヒーはやっぱり美味いし、健さんは車の中でコーヒーを立ててくれたり、また柴田錬三郎さんと一年間ホテルで缶詰めになった時は毎朝ブルーマウンテンだった。パリのサンジェルマンデプレのコーヒー屋では誰もがカプチーノを飲んでいて、それ以後カプチーノを飲む。

大竹さんが夫人とSCAIに2度目。

ロスのインディペンデントキュレーターの吉竹美香さんがロスのBlum &Poeでの展覧会の報告に。
2019.6.15
 〈一触即発デ戦争ガ勃発スル、ソンナ状況。敵地ハソー遠クナイ。イツ攻撃ヲ加エラレルカ分ラナイ。ソノ前ニ攻撃ヲ仕掛ケルカ、オ互イニ胸ノ内ヲサグッテイル状態。戦争ガ勃発スレバ両者共壊滅スルニ決マッテイル〉。この間から戦争の物騒な夢が多い。

早朝、救急車から電話で、長男がタクシー事故に遭って玉川病院に搬送されたという連絡あり。妻、徳永も病院に駆けつける。

雨の中駅前までヨタヨタ歩いて食事に。雨になるとメダカは喜ぶが、おでんがトイレを横着するのが心配。
2019.6.16
 夜、初めてクーラーに切りかえる。

アルプスで原稿を書こうと思って行くが、眼鏡を忘れたので、本を読めず、ただぼんやり無為。喫茶店で仕事をしている人がいるが、家から追い出されたのか、脱出したのか、物書きらしい人もいる。著名人かも知れないが、こちらが顔を知らないだけだ。

あんまり天気がいいので野川公園のベンチで内田百閒の『百鬼園戰前・戰中日記』を読み始める。ぼくが生まれた昭和11年からの日記だ。毎日会った人の名だけで何の用で会ったのかどこの誰だかさっぱりわからない。事実以外の描写はほとんどない。日記ってこれでいいのかも。わが日記は日記にあらずか。(よこお・ただのり=美術家)
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