澁澤龍彥、三宅艶子、羽仁進 評論 現代悪書論 ――不良出版物追放運動に寄せて 『週刊読書人』1963(昭和38)年11月4日号 1―2面掲載|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年6月23日 / 新聞掲載日:-0001年11月30日(第499号)

澁澤龍彥、三宅艶子、羽仁進 評論
現代悪書論 ――不良出版物追放運動に寄せて
『週刊読書人』1963(昭和38)年11月4日号 1―2面掲載

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第5回
不良誌販売拒否をめぐる動き ――「小売全連」で全国的に

(1963年)九月末、山梨県甲府市の書店組合が青少年に悪影響を与える「悪書の仕入れ拒否」の決議をおこなったが、この一地方都市の書店の運動は急速に世論に反映し、全国の書店にも大きな波紋をなげたので、小売書店の全国的な組織である日本出版物小売業組合全国連合会(=小売全連、会長大川義雄氏)も、対策に活発な動きを示しはじめた。そこで問題の焦点になっている小売全連を中心に、こんどの“悪書追放運動”の経過を統括してみよう。(編集部)

【業界“自主規制”のさきがけとして】
 
数年前、週刊誌ブームの波にのって俗悪週刊誌が氾濫したころから“悪書追放”の叫びは繰返しおこなわれたのだが、いち早くそれを徹底させたのは「鉄道弘済会」であった。これは仕入部が直接出版社と取引するので、自主的に低俗誌をボイコットすることが、組織の上からも比較的容易に出来たからである。

しかし小売書店となると、出版物は取次会社を経由して、個々の店が取引きするから、有名雑誌と異なって“見はからい商品”として送品されてくるこれらの雑誌を、組織的に“拒否”することは、今までの商慣習からも足並みを揃えることがむずかしかった。そこで小売全連としては三年ほど前、内部に「出版販売倫理委員会」(委員長・大川会長)を設け、1)1店頭陳列の工夫、2)2陳列をやめて希望する客のみに売る、3)3地方条例できめたものは売らないなどの自粛の方法を傘下の書店に指導してきたという。

また社会情勢も各県に「青少年保護育成条例」が次々に成立していくという事情もあって、低俗出版物に対する風当りは、次第に高まってくる状況であった。現在、有害図書の販売禁止の条例を施行しているところは、和歌山・香川・神奈川・北海道・福岡・長崎・兵庫・高知・宮城・埼玉・岐阜・愛知・群馬・三重・静岡・鹿児島・新潟・茨城・岡山の十九道県に上り、今後も全国的に広がる傾向である。従って低俗出版物を放置しておくと、条例などによる法規制で言論・出版の自由までおびやかされることになるとの配慮から、小売全連でも早急に何らかの“自主規制”をもつ必要があると考えていた。

【販売倫理綱領を制定】

一年ほど前、その足がかりとして「出版販売倫理綱領」を制定することにきめ、各県組合の理事長に草案提出を要望した。そこに今度の甲府市書店組合の「悪書追放」の立上りと、それを支持する強い世論が起ったのだ。早速、小売全連は十月十八日の定例常任理事会で「われわれ書店人は、その扱い商品の公益的使命にかんがみ、良書の普及については積極的に努力するとともに、青少年に有害と認められる不良出版物の販売については、これを拒否する」という決議文を発表するとともに、さきにのべた「出版販売倫理綱領」(別掲)を制定したわけだ。

【該当21雑誌の指定】

ついで二十八日、この問題に関する第一回出版販売倫理委員会を開催、次のように抜本的対策を決定した。

▽仕入れ拒否の問題は、組合からの申入れでは、取次会社が事務整理上応じられないので、全国都道府県四十六の組合が、おのおの小売店の委任状をまとめて、送品停止を要求する。
▽それに該当する雑誌の決定は「出版販売倫理綱領」と世論の一応の目やすとして、地方条例で“不良”の指定をうけた回数などを見合せた上、現物を検討してきめる。その結果別掲の二十一誌が第一回の指定雑誌となった。なお誌名や社名を変更して続けることも考えられるので更に後日、改めて二次、三次の指定をおこなうこともある。また出版社をつぶすのが目的でないから内容が改善されれば直ちに取引を再会する。
▽各県の組合に中央の倫理委と同じような委員会を新たに組織し、常に不良雑誌に対する監視を継続する。


大よそ以上のようであるが、全国の書店約一万四千軒のうち、小売全連加盟書店は約八千軒である。のこる六千軒の書店が、依然としてもとのままの状態であれば、ここから再び崩れるのではないかという危惧もあるわけだ。しかしこの点については小売全連出口事務局長は「未組織の六千軒は、いわゆる兼業書店などで、扱い販売量からみれば、全体の一割弱なので、問題にならないでしょう。当該出版社としても、それだけではとても採算がとれないはずです」と自信のほどを語った。

【積極的に良書普及も】

また小売全連としては、悪書追放に本腰を入れる一方、優良図書の積極的普及を心がけ、「母と子の読書新聞」を書店を通して無料配布したりいま開催中の“読書週間”を機会に、今年は初のこころみとして「新刊良書コンクール」をおこなっている。

一方、出版社側としては、これらの雑誌を発行する社の集りである「週刊七曜会」「雑誌倫理協議会」が三十一日に懇談会を開き、“逐次体質改善をはかって、大人の健全娯楽誌に育成する”と“自粛”を申合せ、取次協会に申入れた。取次協会は仲介的に、同協会の「取次倫理委員会」を中心として、小売・取次・出版社の三者の話合いをおこなって、よりよい解決へみちびくことに決定した。
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