外国語の水曜日 書評|黒田 龍之助( 現代書館 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2019年6月29日 / 新聞掲載日:2019年6月28日(第3295号)

黒田龍之助著『外国語の水曜日』

外国語の水曜日
著 者:黒田 龍之助
出版社: 現代書館
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 外国語に対して、どんなイメージがあるだろう。話せたらかっこいいけど、今更無理かな。英語で道を聞かれたらドキッとしてしまう。語学は学生時代でもうたくさんだ、といったような苦手意識を持つ人もいるかもしれない。著者によると、語学は才能ではない。苦手な人は、ただ今までの外国語との出会いがあまり幸福でなかっただけだ。

当書は、外国語学習や、言語学、はたまた日本語の面白さが、理系大学でロシア語を教える著者によって、ユーモアと共に綴られたエッセイである。言語学といっても、堅苦しい本ではない。外国語が大好きな人にも、外国語アレルギーの人にもぜひ気楽に読んでほしい一冊だ。

まず外国語嫌いの人に読んでほしいのは、第1章「水曜日の外国語研究室」である。本章では、毎週水曜日に著者の研究室に集まるユニークな理系学生達との交流を通して、外国語学習の面白さや醍醐味が描かれている。外国語の教師というのは、語学の天才のように思われるが、当書では著者の人間らしい試行錯誤や苦労、喜びが垣間見える。著者が学生のヂュンと共に、一から新しい言語の学習を始め、クラスメートという同じ立場で切磋琢磨するエピソードがある。確かに、外国語学習にコツはあるかもしれない。しかし、著者とヂュンはそれぞれ、暗記や知識の応用などの面で、得意・不得意があり、互いに良いライバルのようであった。また、外国語のダジャレを考えたり、間違いを恐れず習ったことを積極的に使ったりと、習う側も楽しむことが大切である。著者曰く、ことばはコミュニケーションの手段だが、情報伝達だけがすべてではないということは、ことば遊びの存在からもわかる。ことばを楽しむということからすべてが始まるのだ。

第2章「外国語幻想」では、外国語学習への先入観に対し、著者の経験から軽快に鋭く切り込む。例えば、難しい言語や易しい言語はあるのか、手っ取り早い習得法は留学か、文法はだめでも会話はできるかといった俗説に物申している。著者の主観による部分もあるが、外国語に触れた経験がある人にとって、あるあると頷いたり、はっと気づかされたりするような意見もあるだろう。

第3章「学習法としての言語学入門」は著者の講義ノートをもとに、外国語学習と言語学の関係を眺めながら、外国語習得に役立つヒントが分かりやすく紹介された章である。また、毎授業での実際の設問と学生の解答の一部も紹介されているため、自分で解答を考えてみるのも面白い。著者によると、外国語学習において重要なのは、やめないことである。完璧を求めず、中途半端でもしぶとく気楽にその外国語と付き合うことが大切だ。車の運転とは違い、生半可な知識しかなくても、そう命にかかわることはない。挨拶ができるだけでも楽しいものである。

第4章「本と映像に見る外国語」は本や映画から、言語学的書評・映画評が試みられている。本章で特に印象深かったのは、『ケナリも花、サクラも花』(鷺沢萠、新潮文庫)の項である。そこでは、ソウルの一流ホテルで、日本人の中年男性が、韓国人のフロントマンの日本語の発音を嘲るエピソードが紹介されている。外国人労働者が増えた日本では、彼らの日本語を馬鹿にする人々がいる。外国語を完璧に使い、外国で思い通りに生活するなんてことはなかなか難しい。外国語を勉強することは、人の苦労を知ること、すなわち異文化理解の第一歩でもあるだろう。

語学は一筋縄ではいかない。しかし、新たな世界を覗くのは楽しい。本書中には、外国語に興味が湧くような様々なヒントが散りばめられている。この本を読み終える頃には、きっと何語を勉強しようかワクワクしているはずだ。
この記事の中でご紹介した本
外国語の水曜日/ 現代書館
外国語の水曜日
著 者:黒田 龍之助
出版社: 現代書館
以下のオンライン書店でご購入できます
「外国語の水曜日」出版社のホームページはこちら
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