齋藤元紀 講演会載録 ハイデガー「黒ノート」の全貌 全三四冊のノートには何が書かれているのか|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年6月28日 / 新聞掲載日:2019年6月28日(第3295号)

齋藤元紀 講演会載録
ハイデガー「黒ノート」の全貌
全三四冊のノートには何が書かれているのか

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現代哲学を代表する哲学者マルティン・ハイデガーが、死の直前まで四十年以上書き継いできた「黒ノート」の翻訳が現在進められている。五月二四日、東京・神保町の〈読書人隣り〉で、高千穂大学教授の齋藤元紀氏が、「『黒ノート』の全貌」と題した講演を行った。ハイデガー〈最大の謎〉とも目される文章群には何が書かれているのか。講演を載録する。  (編集部)
第1回
問題含みの余滴

ハイデガー自筆の「黒ノート」(©DLA-MARBACH,WWW.DLA-MARBACH.DE)

「黒ノート」と呼ばれる一連の文書は、ハイデガーが晩年にマールバッハ・ドイツ文書館へ寄贈した遺稿群のうち、黒い布製の袋に収められた黒表紙の三四冊のノートのことです。一九三一年から死の直前まで四十年以上にわたり極秘裏に書き継がれたこれらのノートは、ハイデガー本人により全集最後での刊行が指示されたのですが、予定より早く二〇一四年から刊行が始まりました。「黒ノート」にごく僅かながらも収録されていた反ユダヤ主義と思しき文言のためです。それにより、戦時中のナチズムへの関与との関連も相俟って、「黒ノート」ひいてはハイデガー哲学全体がなお読むに値するのかどうか、といった大騒動が巻き起こりました。
これまで公となった「黒ノート」は、一九三一年から五一年までのもので、全集版で六冊、約二六〇〇頁にのぼりますが、今年の一〇月にはさらに一冊、次いでさらに二冊が公刊予定となっています。この五年間、国内外の研究者たちもこぞって「黒ノート」に取り組み、さまざまなシンポジウムが開かれ、また数多くの研究書が陸続と刊行されてきました。ざっと数えただけでも一八冊、四ヶ月おきに一冊は刊行されているというハイペースです。日本でも、「黒ノート」刊行直後から関東のハイデガー研究会では輪読会を継続してきましたし、二〇一四年にはドイツ文化センターや日独ドイツ文化研究所で、また翌年にはハイデガー・フォーラムでもシンポジウムが開催され、その成果は『ハイデガーは反ユダヤ主義か』(水声社、二〇一五年)やハイデガー・フォーラム・オンラインジャーナル(第十号、二〇一六年)等で公になっています。二〇一八年二月には『現代思想』でもハイデガー特集が組まれ、当方も「黒ノート」論を寄稿しました。今なお問題含みの余滴、と言ってよいと思います。

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