【横尾 忠則】絵は趣味で描く分には大賛成。私も趣味です。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年7月2日 / 新聞掲載日:2019年6月28日(第3295号)

絵は趣味で描く分には大賛成。私も趣味です。

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2019.6.17
 愛知県美術館の南雄介館長来訪。先の計画の打合せ。この歳になると今日より先の計画を話されると、そこまで寿命が伸びたような気になる。ま、少なくともそこまでは健康でいなきゃならない。その先は? 欲は出すまい。成るように成らしめる努めをするだけだ。とは別に美術界の人達も随分鬼籍に入ってしまった。美術家も評論家も。死んだ人がいた時代はなぜか、いい時代だったねと話す。ぼく達がいなくなったあとは次世代の人達に、ぼく達のいた時代のことがよく見えるのかな。そのためには、やりたいことをやっておくべきだろうな。

森の中の遊歩道の草刈りの音がすると、湿った草の匂いがアトリエの中にまで香る。

内田百閒の日記は事実だけを記述して余計な心情にはそっぽを向く。あの時代の文士のダンディズムなんだろうなあ。

SCAIの個展に著名人が来られる度に報告がある。若い人が多いので驚きらしい。

夕方、思い出したようにマッサージへ。
2019.6.18
 何かしようと思いながら、これということもせず、終日無為に終る。
2019.6.19
 〈劇場ノ中ニ人ガ沢山イル。突然2人ノ画家ラシイ男ガ喧嘩ヲ始メタ。一人ガ「殺シテヤル」ト叫ンダ。別ノ男ガ「殺セ」ト言ッタタメニ本当ニ殺ス気デ相手ノ首ヲ絞メタ。スルト首ヲ絞メラレタ男ガ、殺サレルコトニ快感ヲ覚エテ「気持イイ」ト言イ、意識ガ戻リ始メルト苦シクナッテ気持悪イノデ、死ナセテクレト言ッテイル〉恐ろしい夢を見る。

午後はメールとかゲラ校正など絵ではない副業の文章作業をこなす。

夕方、朝日新聞書評委員会へ。この間の重ね刷りの書評をTシャツにしたが、先週のピカソの書評もTシャツにという希望の声あり。試しにツイッターで予約を取ると145人の希望者あり。早速作ることにする。
2019.6.20
 〈ジャスパー・ジョーンズノ家ノ近クニ来テイル。何カオ土産ヲト思ッテスケッチブックニ文字ダケノ絵ヲ描ク。何ヲ描イテイルカ判ラナイモノニナッタ〉そんな夢。

最近、物がよく消える。というより記憶が消えるのかも知れない。物と記憶を取り戻すのに下手すると一日仕事になる。

午後、神戸から山本さん林さんが次回展の展示構想を持ってくる。次回展は「兵庫県立横尾病院」展だ。病気、病院と親和性の関係にあるこの展覧会の企画は面白い。会場全体を病院と仮定すること。
2019.6.21
 〈釈迦ノ霊泉ニ妻ト来テイル。物凄イ人ノ数。ソノ中ニ糸井重里サンヲ発見。マア後デ会エルダロウト思ッタガ、姿ヲ見失ウ。人ガ多スギテ斜メニナッタ道路カラ落チソウニナル。ソコニ物凄イスピードデ電車ガ入ッテクル。トウトウ糸井サントハハグレテ会エナクナッテシマッタ〉

この間のコーヒーの取材でカプチーノと言ったが、好物はエスプレッソだった。

岡部版画工房の牧島さんが制作中のタマの試刷を持参。シルクにエッチングの混成版画。水と油のように思っていたけれど意外といける。

ぼくが暇なのか相手が忙しいのか、ぼくの周辺の人で約束の日程が決まらない人が多い。どうして身動きできないほど仕事をギシギシに埋め込んじゃうんだろう。

夜、BSでルイ・マルの「ビバ!マリア」を観る。アバンギャルドでシュルレアリスムでエンターテインメントでハリウッド映画を片端からフェイクした映画で映画を批評した映画だ。ルイ・マルは大島渚さんの紹介で一度会っていることをフト想い出した。
滝川クリステルさん、SCAI THE BATHHOUSEにて
2019.6.22
 今日は一年で一番日が長い夏至なのに小雨で終日曇っている。

滝川クリステルさんがSCAIのギャラリーで撮った写真のメールが送られてくる。この間の本木雅弘さんと同じように自画像と同じポーズをとっている。

夕方、元朝日新聞の依田彰さんが帰路、ブラッとアトリエに来訪。世田谷美術館で柄谷行人さんの何かがあって、その帰りだという。定年退職のあと、したいことがいっぱいある、例えば絵が描きたいとか。絵は趣味で描く分には大賛成。私も趣味です。
2019.6.23
 久し振りに散歩中の磯﨑憲一郎さんに会う。夏休みに河口湖へ誘ったら朝日新聞の「アトリエ会議を当地でやろう」と言う。「保坂和志さんにも言っときますよ」。なんだ仕事がらみにしちゃうんか。(よこお・ただのり=美術家)
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