レトスリムとヌーヴェルヴァーグ ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 111|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年6月26日 / 新聞掲載日:2019年6月21日(第3294号)

レトスリムとヌーヴェルヴァーグ
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 111

このエントリーをはてなブックマークに追加
シャブロル(左)とドゥーシェ(2000年頃)


HK
 シャブロルの映画の登場人物は、確かに、ブルジョワの文化に翻弄され、どうしようもないところまで引きずり込まれていく印象があります。
JD
 要するに、私たちがブルジョワジーと呼んでいるものは、シャブロルの映画において、ただ単に財産を所有することにすぎないのです。邸宅を所有し、贅沢品を所有するだけに飽き足らず、あらゆるものを求めることになるのです。
HK
 シャブロルは、映画におけるブルジョワ文化という観点からすると、ヌーヴェルヴァーグ以降の映画作家で、唯一デュヴィヴィエやオータン=ララのような、それ以前のフランス映画に連なることができたのではないでしょうか。
JD
 かつての映画作家もシャブロルも、所有するということを取り扱っていますが、根本にある態度は異なります。シャブロルがブルジョワ精神を持つことはありませんでした。デュヴィヴィエのような映画作家にとっては、所有することこそが糧となっています。デュヴィヴィエたちが虚栄の生活しか見せることができなかった一方で、シャブロルは所有することは破局を引き起こすということを見せます。同じ問題を扱っていながらも、両者の間にある違いは、完全に正反対のものです。
HK
 僕の言いたかったことにもう少し言葉を加えます。個人的には、シャブロルの映画の中には、非常によくフランスの文化が見えます。彼と同世代の映画作家がすでに失ってしまったものです。フランスにしかない食事の風景は毎度のように取り扱われています。加えて、本当に偉大なフランスのファッションデザイナーと共に仕事をすることができた最後の映画作家のようにも思えます。デュヴィヴィエたちの時代においては、ディオール本人が衣装担当をしたり、ダリューが当たり前のようにオートクチュールの服を着こなしていました。シャブロルに関しては、調度品一つ一つをとっても、非常に目が楽しまされます。
JD
 フランスの古典映画の時代には、デュヴィヴィエだけでなく、多くの映画作家のもとに、様々な分野から才能を持った人たちが集まっていました。その点からすると、当時のフランスの文化が映像化されて残っているのも事実です。シャブロルの映画にも多くのフランスの文化を見ることができます。しかし、そのような文化は一時的な文化であり、破滅を引き起こすものでしかなかった。シャブロルの映画は、そのような歴史を語り続けるがゆえに、今日においても、未だに多くの人を惹きつけ、レトロスペクティヴのような形で映画が上映され続けています。シャブロルの映画は、強度の強い映画なのです。
HK
 ところで、一九五〇年代の初めにヌーヴェルヴァーグが形になりはじめた頃、ドゥーシェさんたちはレトリスム(詩人のイジドール・イズーを中心とした芸術運動。映画を含む、様々な芸術表現の解体を目指した)と交流があったのではないでしょうか。
JD
 当然、レトリスムのことは知っていました。加えて、私はレトリスト達と出歩くのが好きで、頻繁に会っていました。
HK
 レトリスムの行ったことを考えると、ヌーヴェルヴァーグに大きな影響を与えたのではないでしょうか。
JD
 レトリスムは、ヌーヴェルヴァーグよりも前の時代です。一九五〇年か五一年頃に生まれた運動だったと思います。
HK モーリス・ルメートルの初めての長編は一九五一年に、シネマ・ド・カルティエラタン(ロメールがシネクラブを行なっていた映
画館)で上映されています。
JD
 ヌーヴェルヴァーグの他の人々が、すでに彼らと知り合っていたかは覚えていませんが、私は彼らとすでに知り合いだったのです。私は、昔から色々な人と知り合う機会があったのです(笑)。
HK
 モーリス・ルメートルは昨年亡くなったのですが、ほとんど話題にも挙がることはありませんでした。レトリスムという運動の重要性自体が忘れられつつあるのかもしれません。
JD
 彼はすでに死んでしまったのですか。全く耳に入ってきていませんでした…


〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ジャン・ドゥーシェ 氏の関連記事
久保 宏樹 氏の関連記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」のその他の記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」をもっと見る >
芸術・娯楽 > 映画 > 映画論関連記事
映画論の関連記事をもっと見る >