連載 ポストカード理論 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 112|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年7月2日 / 新聞掲載日:2019年6月28日(第3295号)

連載 ポストカード理論 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 112

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1996年に来日したドゥーシェ

JD 
 モーリス・ルメートルは、昨年亡くなったのですか……世間が忘れてしまっていても、私たちは彼のことをよく覚えています。ロメールとルメートルは、非常に仲が良かった。ゴダールともいい友人であった。ルメートルを含めたレトリスト達と一緒に映画を作ることはありませんでしたが、彼らとはよく見知りあっていました。
HK 
 レトリスムの映画はゴダールに大きな影響を与えていたはずですが、その意味で、ゴダールが「自分は何も発明していない」と言うのは、非常に謙虚であると思います。彼の行なっていることの大半は、もしかしたら全てかもしれませんが、他人が発明したものです。しかしながら、多くの観客、ジャーナリストですら「あなたは驚くようなものを発明した」といった趣旨のことを言っています。
JD 
 そのようなことが言われているのですか。
HK 
 最近ならば、新作がアーカイブだけで出来ているところにだけ目がいっているようです。「アーカイブこそが未来を語る」といったフレーズが一人歩きをしています。たとえば、イェルヴァン・ジャニキアンは、古くからアーカイブによる映画を作っています。加えて、ジャニキアンは、「自分はアーカイブから人類を語るが、ゴダールは自分を語る」と言っています(笑)。結局のところ、ゴダールが作品ごとに用いる技術的細部に意味はないと思います。彼の映画で問題となるのは、技術的進歩ではなく別の事柄ではないでしょうか。
JD 
 当然ゴダールの映画で重要なのは、技術的な細部ではありません。ゴダールは、本当に純粋な方法でモンタージュに向き合っているだけです。少し前に語ったように、フィルムの上に存在するイメージは、別のイメージから分離しています。つまり、どうしてそのイメージは別のイメージに続かなければいけないのか。どうしてイメージが、別の箇所へと飛躍してはならないのか。イメージの内部で何ができるのか。
HK 
 ゴダールはそのような映画づくりを「考査化」と読んでいます。
JD 
 そのように呼ぶのも、もっともです。イメージ自体について、深いところから考察することで、モンタージュという考え方が現れてくるのです。映画に携わる人々は、それぞれのイメージが、ある瞬間を起点として、それに連なっていくものであってほしいと考えてきました。いくつかの連続する映像があり、その連なりがシーンを生み出し、シーンの連なりがシークエンスへとなり、順序づけられたシークエンスが一本の映画へとなると、当然のように考えてしまうのです。空間と時間が関連し合い、連続するものであると思われているのです。しかし、映画芸術において、生においては、事実ではありません。一つの瞬間を例として考えてみてください。そのイメージには、千キロ以上離れた場所が共存し合い、三千年の時を隔てた時間が共にあることが可能なのです。映画という芸術の全くもって驚くべき特徴です。つまり、立体的空間と時間的空間という、二つの次元を同時に再考させるのです。
HK 
 そのような考え方は、映画論におけるポストカードの考え方と近いと思います。ポストカードは、以下の要素で成り立っています。書かれたメッセージがあり、イメージそのものがあり、そして遠く離れた誰かへと向けられた意図がある。
JD 
 それが、私の話していることそのものです。そうした考え方によって、イメージは、何かを語るために存在することになるのです。つまり一つのイメージは、ただ一つのイメージであることをやめ、そのイメージとは別の何かを語り始めるのです。私たちは、たった一つのありふれたモノでさえ、押し付けられたイメージを持っています。街路、そこにある車、歩道など、私たちは本来、様々なイメージを持っているはずです。しかし、一度街路に足を踏み入れ、どこかへ行こうと考えれば、すべての関心は車へと移ってしまいます。そして、他のものは存在しなくなってしまいます。ショーウインドウや広告など、街に溢れたイメージは、すべてが関連し合っているわけではありません。偏狭的な見方は、断片的なものにすぎません。しかし同時に、共存してもいるのです。  〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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