【横尾 忠則】夢の世界では死んだ人も生きているし、生きている人も死んでいる|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年7月9日 / 新聞掲載日:2019年7月5日(第3295号)

夢の世界では死んだ人も生きているし、生きている人も死んでいる

このエントリーをはてなブックマークに追加
アトリエにて細野晴臣さんと(撮影・筆者)
2019.6.24
 加齢と共に昨日まで何でもなかった個所が今日急に痛くなったり作動しなくなったりする。

いつも大江健三郎さんの家の前を通ってアトリエに行く。去年の七月からおよそ一年になるけれど大江家は不在の様子。屋敷の樹木が建物を覆い隠すほど黒々と茂ったままだ。

2019.6.25
 〈大島渚サンガ「横尾サンハ人トカ動物ハ描クンデスカ?」ト聞ク。「何デモ描キマスガ、コレカラハミステリー小説カラヒントヲ得タモノヲ描イテミタイデス」ト言ッテ横ニオラレタ五木寛之サンニ「五木サンハ時間ツブシニ、ミステリーヲ読ムト、『週刊新潮』ノ連載エッセイデ言ッテオラレマシタガ、面白イミステリーガアッタラ教エテイタダケマセンカ」ト聞イタガ返事ハナカッタ〉。夢にでてくる人達は生者、死者の区別が全くない。死んだ人も生きているし、生きている人も死んでいるのが夢の世界らしい。

細野晴臣さん来訪。イーストプレスが企画する二人の対談集だが、1976年の対談以来、43年間に10回近く対談をしているらしい。ひとりの人とこんなに沢山対談しているのは珍しい。ただ対談の内容はほとんど変らず、二人の出会いからインドに一緒に旅行して、帰国後「コチンムーン」というレコードを作った話が大半で、読者は「聞いた、聞いた、何度も聞いた」と言うだろうなあ。細野さんの音楽も僕の絵画も反復がひとつのスタイルだから、話だって反復して当然だ。

2019.6.26
 〈日本喜劇俳優総出演ノイベントノポスタート、榎本健一一座ノポスター二種ヲ依頼サレル〉夢。喜劇はぼくの作品の根底に流れるエレメントのひとつだ。

クロムハーツの安岡曜一さん、ナップ法香さんら来訪。お願いしていたベレー帽がロスから送られて来たので持ってきてくれる。ベレー帽は4個目でどれもプレゼントばかりだ。

野上照代さんが誕生日祝いにと浜松のての字の鰻。仙台の佐々木憲司さんからはさくらんぼ。

ハラ ミュージアム アークにて原俊夫さんと(撮影・徳永明美)
2019.6.27
 満83歳の誕生日。

群馬県の渋川市のハラミュージアムアークで開催中の「Yの冒険」原美術館コレクションでのトークに妻、徳永と出掛ける。高崎駅に出迎えの館長の青野和子さんとそばきりのおそばの昼食。そのあと富岡市立美術博物館・福澤一郎記念美術館へ。各時代ごとの傾向の異なる作品が展示。他にも予定されていた博物館巡りなどの予定もあったようだが、早々に伊香保の岸権旅館へチェックイン。夕食の前に貸切風呂へ。まさかのサプライズ、原美術館館長の原俊夫夫妻と合流。原さんのご長男を交えての夕食は豪華版なり。

2019.6.28
 〈三島由紀夫サント梅原猛サンニ会ウ。三島サンハ「モシ君ガ小説ヲ書クンナラ俺ノ日記ヲ貸シテアゲルヨ」ト〉。三島さんの日記の小説化は大変興味はあるが、それをこなすだけの能力はありません。

朝風呂は大浴場へ。硫黄と鉄分の湯はぬる目だがいつまでもポカポカしている。

ハラ ミュージアム アークは磯崎新さんの広大な緑の敷地に黒一色の木造建築。全体の空間が把握できないようなミステリックな造形感覚に迷う心地よさ。トークは青野さんの質問に答えながら、5点のコレクション作品について語る。こんな遠くまで一体どこから集まるのだろうと予定人数を越えた人達のエネルギーについ多弁になる。愛知県美術館の南雄介館長、白石正美スカイ・ザ・バスハウスのオーナー、神戸のぼくの美術館の平林恵さんらも駆けつけてくれる。知人の顔を見るとなぜか安心するものだ。

今朝の温泉湯の効果か、終日トーク以外の時間はトロンとした心ここにあらず状態である。

2日留守番をしていたおでんはさすがに嬉しいのか、人の顔を見る度に小さくニャンと鳴く。

2019.6.29
 アトリエで制作中の絵に筆を入れる。

夕食は野上さんからの誕生祝いの鰻重。さすが本場物だけあって美味なり。

2019.6.30
 午前中、アルプスでココアを飲みながら『黒澤明の羅生門』を読む。昼は山田洋次さんと増田屋。夕方、整体院でマッサージ。

夜、「君の名は。」を観る。難聴のため絵だけを隅々までジックリ見る。(よこお・ただのり=美術家)
このエントリーをはてなブックマークに追加
横尾 忠則 氏の関連記事
日常の向こう側ぼくの内側のその他の記事
日常の向こう側ぼくの内側をもっと見る >
芸術・娯楽 > 美術 > 現代美術関連記事
現代美術の関連記事をもっと見る >