連載 フォルムによる批評  ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 113|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年7月9日 / 新聞掲載日:2019年7月5日(第3295号)

連載 フォルムによる批評  ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 113

このエントリーをはてなブックマークに追加
オリヴィエ・アサイヤス(左)とドゥーシェ(2019年6月撮影)

HK 
 ストローブが、「一つのイメージは、言うべきことしか語らない」と言っています。
JD 
 ストローブの語る通りです。要するに、分割化を進展化させていくことは、断片を作り上げることにすぎません。しかし映画は、断片の連続なのです。そして、その断片は連合であり、離反なのです。つながり合うと同時に、反対し合います。
HK 
 ここまでの一連の会話の流れで、ふと気付いたのですが、侯孝賢の映画も連合と離反の共存に近いところがあるのではないでしょうか。
JD 
 私が侯孝賢の映画で、とりわけ面白いと考えているのは……まだその点については、少し前に行った分析(DVDの付録映像として、二〇一七年に半年がかりで行った侯孝賢の映像分析)でも論じていませんが、『珈琲時光』においては、連合と離反の二つを見ることができます。侯孝賢の作品は、近年になるほどに重要性を増しています。『珈琲時光』の主人公である女性は、ただ一人作品全体を通じて、どこへ行けばいいのかわからない存在であり続けています。その結果、どこかへ行きたがる、何かを建設したがるのです。私は自由な女性であり、私の本当にやりたいことをやる、どこかへと戻りたい、日本人でも中国人でもありたくない。しかしながら、彼女は同時に枠組みの中に在り続け、加えて、スクリーンの枠の中にも囚われた存在なのです。

問題なのは、彼女自身はどのような枠の中に囚われているのかがわからないということです。当然、何かの枠があるということはわかっており、その枠から外へ出ようと試みます。社会の枠があり、家族の枠があり、そしてスクリーンの枠がある。要するに、私たちが見るべきもの、語るべきものは一つの枠から別の枠への動きなのです。一つ一つの「枠」において、彼女は、どこへ行くべきかはわかりません。しかし同時に、彼女自身がどこへ行くべきかをわかったつもりになっています。物語最後の家族会議においては、父親は何も言わず無言を貫いたままです。なぜならば、そこに答えなどないからです。もしこのようにして映画作品を理解するのならば、一人の本当の映画作家、映画だけではなく芸術家というものは、それぞれの方法を持っているということがわかるはずです。つまり、私たちはフォルム(形式・形)の中にいるのです。そして私たちのするべきことは、そのフォルムにおいて作品を引き出すことなのです。
HK 
 フォルムによって思考するという態度は、ありとあらゆる芸術家にとっても当てはまることなのでしょうか。
JD 
 どのような芸術にあっても、フォルムは必要です。絵画にとっては事実あり、文学、音楽もフォルムを必要とします。フォルムを見ようとせずとも、根本にあるものはフォルムです。私にとってのフォルムとは、芸術の奥底にあるものです。多くの耽美主義者たちは「フォルムによってこそ、私たちは芸術を理解する」と言っていました。物語というものは、後から生み出されるものです。フォルムを理解できないのならば、映画を理解することなど到底できません。
HK 
 理解することが問題となるのでしょうか?
JD 
 「理解する」という代わりに、「わかる」(entendre)と言いましょう。それでも、フランス語の魅力を知ってもらうためにも、「ばか」という言葉を取った上で、理解することが問題であると言いましょう。〔comprendre(理解する)という動詞から、com(強調の接頭詞)—音声上con(ばか)と同じ—という言葉を取ると、prendre(とる)という別の動詞になる〕要するに、作品を受け取らなければいけません。しかし、「ばか」を選び取ること(con-prendre)があってはいけません。そして、芸術家は感受しなければいけない。同時に、「ばか」を受け取ることがあってはならないのです。「これをしたい、そのようなことを言いたい」と、前もって口にするようなすべての芸術家は「ばか」のシステムの中にあるのです(笑)。
HK 
 そのような批評家の見方は、どこかで作家を選別してしまっているのではないでしょうか。
JD 
 もちろん重要な作家を選びとらなければいけません。
〈次号につづく〉
(聞き手・写真=久保宏樹)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ジャン・ドゥーシェ 氏の関連記事
久保 宏樹 氏の関連記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」のその他の記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」をもっと見る >
芸術・娯楽 > 映画関連記事
映画の関連記事をもっと見る >