中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義 書評|中島 岳志(白水社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年7月7日 / 新聞掲載日:2019年7月5日(第3295号)

中村屋のボース ―インド独立運動と近代日本のアジア主義

中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義
著 者:中島 岳志
出版社:白水社
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インドカリーで有名な新宿中村屋は新宿駅近くで存在感を示している。カリーの由来は1915 年(大正4年)に来日した1人のインド人に遡る。
インド独立運動のリーダーといえばチャンドラ・ボースを思い浮かべるものの、ここでは先輩格のラース・ビハーリー・ボース(以下R.B. ボース)が主人公である。英国からの独立闘争の指導者であり、インド総督爆殺未遂事件の首謀者として英国官憲に追われる身となる。ノーベル賞作家タゴールの身内を装い日本に逃れるも、探索は身辺に迫る。その危機を救い匿ったのは中村屋の主人相馬愛蔵であった。まさに侠気である。まるで冒険小説のような逃避行を経て、ここから中村屋との深い縁が生じ、やがて娘の俊子と結婚して日本国籍を取得する。中村屋には本場のインドカリーを伝授する。
R. B. ボースを取り巻く人脈は多彩で、頭山満、内田良平などの右翼団体玄洋社・黒竜会系の人士をはじめ、大川周明、安岡正篤、犬養毅などがいて、一方では孫文とも交流があった。R.B. ボースは日本の力で英国を駆逐しインド解放を目指し、日本側はアジア進出の橋頭堡と現地の親日勢力確保に利用しようとしていた。やがて大東亜共栄圏構想に取り込まれ軍部に同調する彼への同志たちの不信は募り、病魔にも侵され、チャンドラ・ボースにその地位を譲ることになる。
気鋭の政治学者として注目されている著者らしさが随所に見られる。例えばR.B. ボースを庇護した玄洋社・黒竜会系には思想があるわけではない、心情的アジア主義者であって「重要なのは、思想やイデオロギー、知識の量などではなく、人間的力量やその人の精神性・行動力にこそあった。」(p.129)と評している。著者と島薗進の対談『愛国と信仰の構造』(集英社 2016)もあわせて読むことを薦めたい。
この記事の中でご紹介した本
中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義/白水社
中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義
著 者:中島 岳志
出版社:白水社
以下のオンライン書店でご購入できます
「中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義」出版社のホームページはこちら
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