研究不正 科学者の捏造,改竄,盗用 書評|黒木登志夫(中央公論新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年7月11日 / 新聞掲載日:2019年5月24日(第3290号)

研究不正 
科学者の捏造,改竄,盗用

研究不正 科学者の捏造,改竄,盗用
著 者:黒木登志夫
出版社:中央公論新社
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人は何故,不正に手を染めてしまうのだろう。また,不正が後をたたないのは何故か。

STAP細胞事件は皆の記憶に新しい。あの事件では遂に自殺者まで出してしまった。自殺した笹井氏は,優秀な研究者で世界にとって貴重な人材だった。

この本は研究不正に関する古典的名著『背信の科学者たち』(ウィリアム・ブロード他著 講談社 2014)を受け継ぐ形で書かれた。研究不正について42もの事例を挙げ,不正が何故起こるのかを不正をする人の心理まで掘り下げ,また不正の結果の虚しさを訴え,不正を無くすためにはどうすれば良いかが書かれている。著者自身が研究者として身近に見ている事例が多いだけに,その訴えは切実である。

本文中,夏目漱石の『虞美人草』から引用している「嘘は河豚汁である。その場限りで祟りがなければこれほど旨いものはない。しかし中毒たが最後,苦しい血も吐かねばならぬ。」という一文は,研究不正の実態や,その結果どんな結末が待ち受けているのかをよく言い表している。

また,不正が発生する一因として,研究資金の不足も言われている。国立大学や研究機関の法人化で,運営費は著しく減額されている。研究しようと思えば,外部資金獲得競争に勝たなければならず,そこに研究不正が生まれる素地ができてくる。さらに,資金を獲得できたとしても,直ちに見える成果を出さなければ,途中で打ち切られるかもしれず,こういった社会的背景も不正を増やす要因となっている。

よく公共図書館員は文系が多く,科学が苦手と言われるが,もっと科学と向き合うべきである。誤った情報に気づかずにいるのは,司書として恥ずべきことである。もしかすると,捏造された情報が堂々と書架に並んでいるかもしれないのだから。
この記事の中でご紹介した本
研究不正 科学者の捏造,改竄,盗用/中央公論新社
研究不正 科学者の捏造,改竄,盗用
著 者:黒木登志夫
出版社:中央公論新社
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