14歳からの資本主義 君たちが大人になるころの未来を変えるために 書評|丸山 俊一(大和書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年7月12日 / 新聞掲載日:2019年7月12日(第3297号)

14歳からの資本主義 君たちが大人になるころの未来を変えるために 書評
これからの資本主義をどう俯瞰するか
―『14歳からの資本主義』―

14歳からの資本主義 君たちが大人になるころの未来を変えるために
著 者:丸山 俊一
出版社:大和書房
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表題が示唆するように、『14歳からの資本主義』の主眼は「資本主義」というものを「14歳」という若い未来の年代(中学生)向けに丁寧に語り直すことである。表現や文体を平易にし、専門的な内容も抵抗なく理解できるよう工夫されている。好感のもてるスタンスといえよう。「この10年で世の中は大きく変ります」、そしていまは「正解のない時代」である。一見迂遠にみえる「資本主義」をあらためて著者の丸山氏が深く考察し直そうとする大きな理由だ(丸山氏は大きな反響のあったNHKドキュメンタリー番組「欲望の資本主義」の制作統括者であり、当該番組の内容はすでに第三弾まで書籍化されている。あわせて参照されたい)。

われわれが生き暮らす〈資本主義〉というしくみは、いかなる原理や思想にもとづき、それらは今後どうなりうるのか。「変わる」もの、「変わらない」ものは何か。むろんこうした根源的な問いへの解答はひとつでない。

グローバル化やインターネットを物質的基盤とする高度情報化・デジタル社会の功罪、経済成長とテクノロジーの相関、格差・不平等そして分断社会の諸相、成長資本主義の不安定性、GAFAの衝撃、主流派経済学が前提とする合理的経済人の虚構さなど、本書は幅広い世代に通じうる重要かつ多様な問題群を明快に概説している。とくに著者が強調するのは、現代の資本主義社会においては人間の感情や共感も「商品化」され、それらは絶えず「差異化」されていくという点だ。資本主義というしくみを推進しているのは、実際のところきわめて「シンプルな原理」にほかならず、人間が潜在的にもつ「欲望」を媒介し、まさに「やめられない、とまらない」資本主義の論理が強化されている。では、こうした資本主義はこれからも壊れることなく存続できるのか、それとも資本主義へのオルタナティブが生まれうるのか、きわめてスリリングな問いかけだ。

人間が秘める「欲望」というキーワード。本書ではマルクスやケインズ、シュンペーターら偉人の洞察も積極的に活用されている。時代が彼らの肉声を求めているのだろう。転換期を迎える世界経済と資本主義のゆくえを展望するうえで、多くの問題意識を喚起してくれる好著だ。
『資本主義と 闘った男』は、六〇〇頁強の大著だが、とても読みやすい。専門家に限らず、幅広い世代に本書を薦めたい。新自由主義「グローバル資本主義」とそのなかに包摂され続ける「人間」。そもそも「経済学」とはいかなる学問か、その根本が問われている。本書はそれを考え直す最良の手引きとなろう。

世界的経済学者として知られる宇沢弘文の生涯と学問的・社会的貢献の数々を雄大に語り尽くそうとする書。それはまさに宇沢をめぐる「二〇世紀経済学史」そのものであり、日本をふくむ世界経済の現状と動向も、彼の学術的・実践的活動から詳細にうかがえる。その意味で本書は秀逸な時代史としての風味も有している。宇沢が交流を深めてきた当代随一のノーベル賞学者たち(ケネス・アローやロバート・ソロー、ポール・サムエルソンなど)との格闘ぶりには大いに知的興奮をそそられよう。スティグリッツやアカロフ、岩井克人ら宇沢自身の特別な人間的魅力に惹かれた学者は国内外問わず多数輩出されている。彼らにとって宇沢は「情熱的なメンター」にほかならない。

宇沢二部門モデル、最適経済成長理論、内生的経済成長理論、ペンローズ曲線にもとづく投資理論(ミクロ的基礎をもつマクロ理論の先駆)など数理経済学分野の最先端を担った宇沢が勝ち得た研究者としての世界的名声。しかしその世界的名声が頂点にあるなか日本へ帰国。宇沢はケインズ「反革命」を先導した保守派の教祖であり同僚のシカゴ大のミルトン・フリードマンとの戦いに敗れる。そして異端派のジョーン・ロビンソンの「経済学の第二の危機」や「影(Shadow)の経済学」へ積極的にコミットし、環境破壊や都市問題、公害に直面した日本経済の負の病に苦悩する。「経済学という学問体系、知識の体系が自分自身の問題意識に根差したものではなく、どこかから与えられたものにすぎないからではないか」。自らが築き上げてきた主流派の近代経済学批判も先鋭さを増し、そうした問題関心を鮮やかに表明した『自動車の社会的費用』(一九七四年)は広く知られている。経済学から離れた「空白の10年」もあったという。晩年の宇沢が辿り着いた〈社会的共通資本〉の理論には賛否両論あり、さらに宇沢経済学の変質それ自体をどう理解すべきなのかという大きな問題も残されているに違いない。その軌跡の全体像は佐々木氏のいう「未完の思想」として後世に引き継がれていく。

スティグリッツが語った「ヒロの思想は三〇年後にわかる」。宇沢経済学とその思想には、時代があとからついてくるのだろうか。『経済と人間の旅』や『人間の経済』、『宇沢弘文 傑作論文全ファイル』など、宇沢の書物もここ数年、復刻され始めている。宇沢先生をめぐる格闘史は、経済と経済学の原点を学び直すことでもある。「経済学の世界」の広大さと奥深さを強く実感させてくれる作品だ。
この記事の中でご紹介した本
14歳からの資本主義 君たちが大人になるころの未来を変えるために/大和書房
14歳からの資本主義 君たちが大人になるころの未来を変えるために
著 者:丸山 俊一
出版社:大和書房
以下のオンライン書店でご購入できます
資本主義と闘った男  宇沢弘文と経済学の世界/講談社
資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界
著 者:佐々木 実
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
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