祈りの幕が下りる時 書評|東野 圭吾(講談社 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2019年7月13日 / 新聞掲載日:2019年7月12日(第3297号)

東野圭吾著『祈りの幕が下りる時』

祈りの幕が下りる時
著 者:東野 圭吾
出版社:講談社
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本書は加賀恭一郎シリーズの十作目である。本シリーズは主人公加賀恭一郎が警視庁捜査一課や所轄など所属を変えながらも事件に立ち向かう連作短編のミステリである。本作は2018年に映画化されており原作、映像ともにシリーズの中でも印象に残っているものだったので選書した。

事件は押谷道子が越川睦夫の借りるアパートで死体として発見されたのが始まりである。殺された土地は押谷道子とは全く関係がなく、越川との関係も不明であった。また同時期にホームレスの焼死事件が近くで起こっており、事件の捜査をする松宮は二つの事件に関連性を感じていた。

押谷道子の捜査をするうちに、彼女は古い友人である舞台演出家、浅居博美に会うために上京したことが判明した。浅居博美は押谷道子が殺害される直前に会っていることもあり、事件の容疑者となった。事件の真相を捜査していくうちに彼女の生い立ちが明らかになっていく。


実は本書には殺人事件の他に、もう一つミステリがある。それは、松宮の従兄弟である、加賀恭一郎の母の死にまつわるものだ。加賀の母の遺品の中には「12の橋の名前」が書きこまれたカレンダーがあった。そして越川の部屋からも同一の書き込みがされたものがみつかったことから、加賀は母の謎に関係あるのではないかと思い捜査に参加することになった。

私は本書に二つの見どころがあると感じた。

一つ目は事件の主要人物である浅居博美である。彼女と彼女の父である忠雄はただの親子よりも強い絆で結ばれていた。彼女たちは最後までお互いのことを大切に思いながら動いていた。娘が夢を叶えて幸せになるのを願いながら覚悟を決める忠雄や、そんな忠雄を感じ取り最後の行動にでた博美には感動するものがあった。そんな彼女たちの行動はお互いに対する愛情からくるものではないかと感じた。一般的なミステリだと事件の謎解きに重きがおかれるものもあるが、本書ではヒューマンドラマの要素も強く描かれていると思う。そのため、ミステリとしてではなくとも楽しめるのではないだろうか。

二つ目は最後の最後まで犯人が分からないところである。私にはこのことが一番の見どころに感じられた。いいミステリ作品で、最後まで犯人が分からないことは当たり前だといわれるかもしれない。しかし本作では、中盤にかけて徐々に情報が集まり、一度は事件の真相に近づいていると錯覚させられるも、加賀の母の交際相手や浅居博美の父の死、中学の担任であった苗村がついた嘘といった、捜査をしていく中で出てきた謎に矛盾が残り、まだ真実にたどり着いていないことが暗示される。最後まで読み切ったとき、結末は読者の予想を大きく裏切るものだったのではないだろうか。その結末に、独立した情報がすべてつながり、読者の私が途中で感じた違和感が消え去るようだと感じられた。
この記事の中でご紹介した本
祈りの幕が下りる時/講談社
祈りの幕が下りる時
著 者:東野 圭吾
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
「祈りの幕が下りる時」出版社のホームページはこちら
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